2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01074
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北 倫子 Osaka University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | モット転移 / 軌道自由度 / 非局所揺らぎ / クラスタ動的平均場理論 |
Research Abstract |
遷移金属酸化物を中心とした強相関電子系において、超巨大磁気抵抗効果や新しく発見された高温超伝導体等、電子の軌道自由度に起因した多彩な物性が数多く報告され、注目を集めている。本研究では、多軌道自由度を持つ強相関電子系におけるモット転移及びその近傍での振る舞いに注目した。特に、従来中心的に解析されてきた局所的な相関効果に加えて、非局所的な揺らぎの効果について解析を行った。非局所的な揺らぎの効果は、波数に依存した物理量や、磁気・軌道秩序において、しばしば重要な寄与を与えることが知られている。近年の実験技術の急速な進歩により、角度分解光電子分光等の分解能が向上し、小さなエネルギースケールでフェルミ面や状態密度を調べられるようになった。また、軌道秩序等を直接観測する手法も発達している。そのため、多軌道強相関電子系において非局所的な揺らぎの効果まで取り入れた解析の重要性は、今後ますます高まるものと考えられる。 本研究では、非局所的な揺らぎの効果を取り扱うために、クラスタ動的平均場理論を用い、多軌道強相関電子系を記述するミニマムな模型として二軌道ハバード模型の解析を行った。特に、クォーターフィリングにおけるモット転移近傍のスピン・軌道揺らぎについて、フント結合とバンド幅の違いの効果に注目して解析した。その結果、軌道自由度によってエネルギー的に縮退した状態が生じると、そのフラストレーション効果によって、低温まで特定のスピン・軌道に関する相関が発達せず、フェルミ液体的な準粒子状態が安定化されることを明らかにした。同様の振る舞いは、幾何学的フラストレーションを持つ系においても報告されており、遍歴強相関電子系において、基底状態に縮退がある場合の共通した振る舞いであることが期待される。 本研究で得られた結果は、国内外の学会で発表し、また査読誌(雑誌論文、国際会議録)として発表した。
|
Research Products
(6 results)