2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性トンネル接合における次世代トンネルバリア材料の探求
Project/Area Number |
07J01159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 利映 Osaka University, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | spintronics / TMR / MTJ / MgO |
Research Abstract |
結晶MgOトンネル障壁を用いた磁気トンネル接合(MTJ)素子の巨大トンネル磁気抵抗(TMR)効果が2001年に理論予測され、2004年に実験的にも実現された。現在、CoFeB/MgO/CoFeB-MTJ素子を基本技術にしたハードディスク磁気ヘッドやMRAMの研究開発が現在精力的に進められているが、より高性能なMTJ素子を作製するための指針を検討するためには、MgO障壁MTJ素子におけるトンネル伝導の詳細な物理の解明が不可欠となる。単結晶MgO(001)障壁を用いたエピタキシャルMTJ素子はスピン依存トンネル伝導の物理を研究するためのモデル系である。 平成21年度は、[001]方向に対してフェルミエネルギーにΔ_1バンドがない特異なバンド構造を持つCr(001)を上部電極としたエピタキシャルFe/MgO/Cr/Fe-MTJ素子の実験を行った。その素子の抵抗値のCr膜厚依存性を評価することで、Cr層はΔ_1のコヒーレントなトンネル過程に伴う電流成分に対してはトンネル障壁層として機能し、それ以外の電流成分に対しては単純に金属層として機能していることを確かめることができた。さらにこの結果を踏まえて、Δ_1のコヒーレントなトンネル過程に伴う電流と、散乱を伴うインコヒーレントなトンネル過程による電流を分離評価できる解析法を提案した。この解析法によりTMR効果の実験的な上限を決めているのは、トンネル障壁層と強磁性電極層の間にある格子不整合に起因する転位や電極界面過酸化による構造欠陥であることを明らかにした。以上の結果は、今後のMgO障壁MTJ素子の開発指針を与えるものである。
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Research Products
(7 results)