Research Abstract |
今年度の研究は,無視できない欠測を持つ分割表における独立性の検定について行った.無視できない欠測とは,欠測する理由がその値に依存しているというものである.そしてこのような欠測は,典型的な場合として,分割表の形で得られる.そして分割表の形で得られたデータに対してもっとも頻繁に行われる検定が,独立性の検定である.ところが,無視できない欠測が存在する場合には,独立性の検定は,識別性(パラメータを正しく推定すること)が失われるために実行が不可能になる(Ma,Geng and Li,2003),本研究では,無視できない欠測が存在するときに,新たな仮定を設けることにより識別性を確保し,尤度比検定を行う場合の検出力への影響を調べた,まず,無視できない欠測を生じさせるメカニズムのうち分解可能(Lauritzen, 1996)と呼ばれる性質を持つものを選び出した.このメカニズムは,実際データに対してももっとも想定されうるものである.このメカニズムに基づき,欠測モデルを想定し,尤度比検定統計量を構成した.先にも述べたように独立性の仮定の下では,このモデルは想定されないので,解析者が前もって与えることにより識別性を確保するパラメタを想定した.この想定したパラメタを色々と変えることによる検出力に対する影響を調べるために計算方法を提唱し,数値実験を行った.その結果によると欠測メカニズムを正しく特定できている(パラメタを正しく入れる)ことが出来ていれば,欠測メカニズムを考慮した尤度比検定等計量は,欠測メカニズムを考慮しない統計量に比して高い検出力を持っていること,そして欠測メカニズムの特定の間違いの度合いが大きくなればなるほど,欠測メカニズムを考慮した尤度比検定等計量の検出力は下がっていき,最悪の場合には欠測メカニズムを考慮しない尤度比検定等計量よりも検出力が低くなる場合があるということである.
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