2007 Fiscal Year Annual Research Report
少数スピン系における近藤効果・RKKY相互作用の研究
Project/Area Number |
07J01171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新見 康洋 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近藤効果 / RKKY相互作用 / 量子コヒーレンス / 位相緩和長 / メソスコピック系 |
Research Abstract |
メソスコピック系において、最も重要となるのが量子コヒーレンスである。それは、系のサイズが電子の位相緩和長(非弾性散乱により位相の情報が失われるまでの長さ)程度となったとき、電子伝導の振舞いを支配する。近年、位相緩和時間τφの精密な測定が金属細線を用いて行われ、純粋な貴金属のτφはAltshuler-Aronov-Khmelnitzky(AAK)による理論通り低温で1/T^<2/3>に比例するが、磁性不純物がある場合、近藤温度付近でプラトーをもつことが示された。近藤温度より十分低温では、不純物スピンは伝導電子によって完全に遮蔽され、系の電子状態は再びフェルミ液体論で記述されると考えられているが、その実験ではフェルミ液体論で期待されるτφ〜1/T^2からはずれており、近藤効果のスピン遮蔽に関する大きな問題を残している。 本研究では半導体2次元電子系を用いて細線を作成し、集束イオンビームの手法で半導体ヘテロ接合面に打ち込まれる不純物量を制御しながら、位相緩和時間の測定を行っている。磁性不純物を用いれば、2次元電子ガスとの2次元近藤効果も期待され、上記の問題を違った系を用いて調べることができる。また半導体2次元電子系におけるτφの精密測定は、将来の量子コンピュータの実用性に対する1つの指標を与えるため、応用研究の分野からも注目されている。今年度は、磁性をもたないGa^+不純物の量(すなわち系の拡散定数D)を制御しながら、位相緩和時間の温度依存性を測定した。その結果、Ga^+不純物の量を2次元電子ガス濃度の1/10まで増加させてもτφは不純物の全くない場合とほとんど変わらず、最低温度(30mK)まで飽和なくAAKの温度依存性に従った。この実験は、Dを大きく変えられない金属細線では到達できず、昔から議論されてきたτφのD依存性に決着をつける結果であるといえる。
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[Presentation] Universal Dephasing in Kondo Systems2008
Author(s)
F. Mallet, Y. Niimi, Y. Baines, D. Mailly, S. Unlubayir, D. Reuter, A. Melnikov, A. D. Wieck, T. Micklitz, A. Rosch, T. A. Costi, L. Saminadayar, and C. Bauerle
Organizer
Moriond 2008
Place of Presentation
La Thuile, Italy
Year and Date
2008-03-12