2008 Fiscal Year Annual Research Report
少数スピン系における近藤効果・RKKY相互作用の研究
Project/Area Number |
07J01171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新見 康洋 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 近藤効果 / RKKY相互作用 / 量子コヒーレンス / 位相緩和長 / メソスコピック系 |
Research Abstract |
電子の量子コヒーレンスは、メソスコピック系の物理において最も基本的かつ重要な概念の1つである。電子が位相のコヒーレンスを保てる時間τ_φはFermi液体における準粒子の寿命と密接に関わっており、多くの量子干渉現象の観測に制限を与える。したがってこの時間詳細に理解することは、メソスコピック系において必要不可欠である。低温での電子の位相緩和時間τ_φは電子間相互作用によって制限される。Fermi液体論に基づいた標準理論(AAK理論)によると、温度ゼロの極限ではτ_φは発散的に長くなるのに対し、Golubev、Zaikin(GZ)理論によると、τ_φは温度ゼロでもゼロ点量子揺らぎのためにある制限を受けてしまう。これら2つの理論を実験的に確かめるために、本研究では高移動度の2次元電子ガスを用いて細線を作成し、そこに集束イオンビームを用いてGa^+を打ち込むことで系の拡散定数Dを2桁にわたる広範囲で制御しながら、擬1次元細線の位相緩和時間τ_φの測定を行った。その結果、τ_φはどの拡散定数においても最低温度25mKまで飽和なくAAK理論で予測される温度のべき乗則T^<-2/3>に従うことがわかった。さらに60mKにおけるτ_φを拡散定数Dの関数としてプロットしたところ、拡散領域ではτ_φはD^<1/3>に従い、その係数も含めてAAK理論で予測される値と定量的に一致する。一方、半バリスティック領域ではτ_φはDに依存せず一定値をもつ。これらの実験結果はAAK理論が正しいことを支持し、近年金属細線で報告されている低温でのτ_φの飽和は外的要因であることを強く示唆している。さらに半バリッスティック領域ではこれまでの理論で予測されなかった新しいτ_φのdisorder依存性を観測することにも成功した。
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