2009 Fiscal Year Annual Research Report
少数スピン系における近藤効果・RKKY相互作用の研究
Project/Area Number |
07J01171
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新見 康洋 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教
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Keywords | 近藤効果 / RKKY相互作用 / 量子コヒーレンス / 位相緩和長 / メソスコピック系 / アンダーソン局在 |
Research Abstract |
温度ゼロの極限で位相緩和長L_ψが発散的に長くなるか、それとも有限値に飽和するかはメソスコピック系において重要な主題の一つである。昨年度までの研究で、2次元電子ガスを用いて量子細線を作成し、disorder(つまり拡散定数D)のみの値を変えながら位相緩和長を測定した結果、(i)平均自由行程l_eが細線幅wよりも短い拡散領域では、L_ψはフェルミ液体論で予測される温度依存性(∝T^<-1/3>)及びdisorder依存性(∝D^<2/3>)に従い、その係数まで含め定量的に理論と一致すること、(ii)拡散領域での抵抗の温度依存性はAltshuler・Aronovの理論通り、T^<-1/2>則に従うことを示し、その結果はPhysical Review Letters誌に掲載され、Editors'suggestionにも選ばれた。 本年度は、位相緩和長L_ψが1次元局在長ξ_<loc>^<1D>と同程度になるまでdisorderの数を増やして、強局在領域で位相緩和長及び細線の抵抗の温度変化を測定した。温度を下げるとともに位相緩和長・抵抗ともに増大はするが、拡散領域で観測された温度依存性とは共に異なっている。抵抗の場合、拡散領域では電子間相互作用によりT^<-1/2>に比例するが、強局在領域では1次元variable range hopping則に従う。また位相緩和長は、温度の減少とともに発散的に長くはなるが、発散の指数が拡散領域のそれ(-1/3)に比べて小さくなった(-0.26)。同様の傾向は、2次元Hall barでも観測された。これらの結果から、位相緩和長は次元性に依らず、強局在領域でも依然として発散的に長くなるが、その発散の指数は拡散領域で期待される値よりも小さくなることがわかった。これらの結果は、現在Physical Review B誌に投稿中である。
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