2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯川 拓 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 地域機構 / 地域主義 / 民主化 / ASEAN |
Research Abstract |
本研究は途上国地域における民主化が国家間関係(特に地域機)に与える影響について一般化を試みるものであるが、本年度は対象を東南アジア諸国連合(ASEAN)に絞って、民主化による変化について考察した。具体的には、近年注目を浴びている「ASEAN Way」と呼ばれるASEANの伝統的な規範について、それをASEANの外交当事者がどのように語ってきたかという言説分析からアプローチした。その結果、以下の事実を実証的に示すことが出来た。第一に、一般にASEAN加盟国の団結のシンボルとして理解されてきた「ASEAN Way」という用語は実は90年代後半にASEAN加盟国内で自分達の伝統的なやり方についての議論が盛んになされたときに、ASEAN内の保守派が改革派の主張に対抗するためにそれまでのやり方を賛美すべく用いられた語であったということである。つまり、これまでのASEAN研究では長年の折衝によって団結の中から生じたシンボルであったと理解されていた「ASEANWay」は、実は論争の中から生じたシンボルであったことを明らかにした。第二に、「ASEAN Way」と呼ばれるASEANの伝統的やり方は97年の通貨危機によって大きく動揺したとされているが、実際には当事者は通貨危機を「自分達のやり方を揺るがすもの」とはしておらず、新たにASEANに加盟したミャンマーの民主化の問題をそのように捉えていたことを言説分析から明らかにした。これにより、通貨危機並びに加盟国の民主化という問題に対するASEANの外交当事者の理解について、新たな知見を得ることが出来た。以上の研究は、一点目は『国際政治』に、二点目は『国際関係論研究』に、それぞれ投稿し、採用が決定している。
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Research Products
(3 results)