2007 Fiscal Year Annual Research Report
近世和文小説の研究-国学研究と読本創作の相関についての分析-
Project/Area Number |
07J01301
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 聡一 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC)
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Keywords | 和文小説 / 国学 / 読本 |
Research Abstract |
本研究「近世和文小説の研究-国学研究と読本創作の相関についての分析-」は、国学研究と読本創作が互いに影響を及ぼし合う様相を、和文小説とそれを取り巻く文化状況に注目し、研究するものである。本研究課題を達成するべく、平成19年度においては資料の収集および整理に多くの時間と労力を費やすことを目標とし、まず入手困難な資料の紙焼写真の入手を行った。本年度はおもに石川雅望・芍薬亭長根に関係する文献が中心である。さらに未知の近世和文小説を調査・発掘した。本年度は都立中央図書館を悉皆的に調査した。以上2点にわたる文献資料の収集・調査は順調にすすみ、所期の目標を達成した。本年度の研究成果として上記資料を用いて行ったものに、まず、論文「近世和文小説と「誤読」-『飛弾匠物語』についての分析」がある。これは、石川雅望による和文小説『飛弾匠物語』の分析を通して、古典についての<解釈>と、完結した読本を形作るための<編集>という二つの営為が、作品創出の現場においてどのようにせめぎ合っていたのかを明らかにした論考である。また、口頭発表「「鵺」の物語-芍薬亭長根『国字鵺物語』」、同「芍薬亭長根『坂東奇聞濡衣双紙』考」がある。芍薬亭長根の読本は雅望の読本とともに大田南畝から高い評価を受けたが、これらはその所以をそれぞれ文体面・内容面から分析追及した研究報告である。文化年間江戸の和文小説とその周辺の読本を南畝の視点を通して文学史的に位置付けるものであり、来年度の研究の前提となる知見でもある。最後に、論文「安見宗隆『をりはえ物がたり』解題と翻刻-近世和文小説の一例-」がある。これは、学界に未紹介であった当該書を翻刻するとともに、解題において建部綾足の和文小説『西山物語』からの影響を具体的に指摘した論考である。江戸時代を通した和文小説史の構築にむけて重要な調査研究となった。
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