2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世和文小説の研究-国学研究と小説創作の相関についての分析-
Project/Area Number |
07J01301
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
天野 聡一 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 和文小説 / 国学 / 読本 |
Research Abstract |
「近世和文小説の研究-国学研究と読本創作の相関についの分析-」について、20年度は以下の作業および発表をした。1.芍薬亭長根に関係する論考を発表した。論文「芍薬亭長根『坂東奇聞濡衣双紙』考-『通俗金翹伝』の利用法について」(『国文論叢』41号、平成21年3月)、「大田南畝の読本観-芍薬亭長根『坂東奇聞濡衣双紙』がら見る」(『第32回国際日本文学研究集会会議録』平成21年3月)がそれである。これらの論文は、芍薬亭長根の読本『坂東奇聞濡衣双紙』の分析に主眼を置きつつ、本作を高く評価した南畝の読本観にまで遡ることで、文化年間江戸の和文小説とその周辺の読本を南畝の視点から把握しようとするものである。2.未紹介の和文小説を調査・発掘し、翻刻・解題を加えた。成果としては、論文「服部高保『てつくり物かたり』解題と翻刻-近世和文小説の一例-」がある。これは、従来あまり知られていなかった当該書を翻刻するとともに、解題において作品内容に分析を施した論考である。真淵の門弟である高保にかかる和文小説があったということは、現在知られている和文小説が多く真淵門弟の手によるものであるということと相俟って、非常に示唆的である。江戸時代を通した和文小説史の構築にむけて重要な調査研究となった。3.近世和文小説の創作基盤となる古典研究についての調査を行った。本年度は五井蘭洲、賀茂真淵による『源氏物語』注釈について原本を実見し、新たな知見を得た。調査の成果は来年度に発表する予定である。
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