2007 Fiscal Year Annual Research Report
トレードオフが適応進化をどう制約するのか:ゲンノショウコにおける花色多型維持機構
Project/Area Number |
07J01387
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土松 隆志 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 適応進化 / 自然選択 / 自殖 / 進化ゲノミクス |
Research Abstract |
(i)ゲンノショウコの花色にはたらく自然選択 植物と昆虫の食う-食われるの相互作用の進化動態を探るため、花色にかんして赤白の種内多型がみられるゲンノショウコと、その胚珠に産卵するクロツヤサルゾウムシを対象に日本各地で野外調査を行った。その結果、ある集団では、ゾウムシの寄生率はゲンノショウコの花色に強く依存することがわかった。このことは、ゾウムシの産卵行動にかんして花色にたいする選好性があること、その結果としてゲンノショウコの花色多型に現在自然選択が働いていることを示唆している。また、ゲンノショウコの近縁他種が同所的に生息している集団では、ゾウムシの産卵行動の花色にたいする顕著な選好性は見られなかった。これは、種内変異にはたらく自然選択は群集の種組成に大きく影響を受けることを示唆している。 加えて、花色や被食防衛の遺伝的背景をさぐるため、ゲンノショウコの栽培、交配実験、候補遺伝子アプローチによる責任遺伝子探索を行っているほか、ゲンノショウコに見られる花色の地理変異の原因を探るべく、分子系統地理学的な解析も行っている。 (ii)シロイヌナズナ属における自殖性の起源とその進化的帰結 生物の適応進化のモデル系として、ゲノム情報の蓄積されたシロイヌナズナ属を対象に、自殖性の起源とその進化的帰結をさぐる研究を、チューリヒ大・清水健太郎博士と共同で開始した。本研究では、(1)自家不和合でおもに他家受粉をおこなうハクサンハタザオ・ヨーロッパミヤマハタザオから、どのような遺伝子が変異して自殖性のシロイヌナズナ、ミヤマハザオが起源したのか(2)自殖性が起源した後の副次的な生殖器官の形態的変化、生活史の進化がどのような遺伝的変化のもとにおきたのかを探っている。
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Research Products
(2 results)