2007 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌におけるTGF-βシグナルに対するDIP1の機能の解明
Project/Area Number |
07J01397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生島 弘彬 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | DIP1 / HHM / Olig1 / synexpression group / 肝細胞癌 / 膠芽腫 / TGF-β / Smad |
Research Abstract |
本研究員が解析を進めているDIP1(別名HHM)は、これまでに悪性腫瘍発生との関与が複数報告されているが、Rbのリン酸化を阻害し、細胞周期がSphaseに入ることを阻害するという報告など、細胞周期を負に制御するという報告がある一方で、ヒトの肝細胞癌の初期段階からDIP1の発現が著明に増加しているという報告など、発癌を正に制御していることを示唆する報告も多数なされている。しかしながら、このようなDIP1の悪性腫瘍に対する二面性が引き起こされる機序については、これまで全く報告がなく、本研究員は、癌の発生及び転移に大きく関与していると考えられているTransforming Growth Factorβ(TGF-βのシグナルに対してDIP1が及ぼす影響を検討している。 本研究員らは、まず、DiP1のloss-of-functionの系を構築し、このDIP1がTGF-βシグナルのNegative Regulatorであることを見出すと同時に、TGF-βシグナルの下流遺伝子のうち、一部の遺伝子発現のみを特異的に制御していることを見出した。このようにTGF-βシグナルの下流遺伝子のうち一部の遺伝子発現を特異的に負に制御する因子については、これまでにほとんど報告がなく、さらに、詳細なメカニズムが検討されている報告はこれまで一報もない。我々はこのようなDIP1の、TGF-βシグナルに対する"特殊な"制御のメカニズムを探るためにDIP1結合因子の探索をSwedenのLudwig Institute for Cancer ResearchのDr.Ulf Hellmanと共同で行い、Olig1と呼ばれる因子を、DIP1結合タンパク質として同定した。本研究員のさらなる解析の結果、このOliglは、TGF-βシグナルと協調的に作用して、TGF-βシグナルの下流遺伝子のうち一部の遺伝子発現を特異的に増強させていることが見出された。本研究員らは、このようにOlig1とTGF-βシグナルによって協調的に発現制御されている遺伝子を"Olig1-Smad synexpression group"と名付けた。 この解析に加え、既に、我々は、このDIP1がTGF-βシグナルによって誘導される多様な細胞応答のうち、一部の細胞応答のみを抑制するというデータを得ている。TGF-βシグナルは生体内において腫瘍の進展に促進的に働く側面(浸潤の促進等)と抑制的に働く側面(癌細胞増殖の抑制等)の両面をもっており、このDIP1の解析は、そのうちの腫瘍促進的な側面のみを抑制することのできる小分子化合物の開発に大きく寄与すると考えられる。
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Research Products
(3 results)