2007 Fiscal Year Annual Research Report
カキ果実におけるタンニン蓄積機構の解明とその育種学的利用
Project/Area Number |
07J01415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池上 礼子 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カキ / タンニン生合成 / 果実生理 / 二次代謝 / マーカー |
Research Abstract |
(1)これまでの研究において、中国の完全甘ガキの交雑第一世代を用いたsuppression subtractive hybridization (SSH) 法で単離し、その発現解析からタンニン生合成系との関与が示唆されているflavonoid 3-0-galactosyltransferase(F3GalTase)について、融合タンパク質を発現させ、精製の後、catechinを含めた様々な基質をもちいてin vitro でのアッセイをおこない、酵素の性状解析を行った。F3GalTaseは効率よくanthocyanidinsとflavonolsを基質としたものの、catechin類の配糖は検出できなかった。次に、タンニン生合成の鍵酵素であるANRについても同様に融合タンパク質を誘導、精製してanthocyanidin配糖体を基質とするか否かを調査したところ、アグリコンに関しては活性を持つもの、配糖体に対しては活性を持たなかった。カキの果肉にはanthocyaninが蓄積しないことから、カキのF3GalTaseはおそらくin vivoでflavonolsの配糖を行っていると考えられた。さらに中国および日本の完全甘ガキ、非完全甘ガキにおいて、これまでその存在が報告されていないflavonolsをHPLCで分析したところ、日本の甘ガキはほとんどflavonolsを蓄積しないのに対して、中国の甘ガキ、渋ガキはある程度のflavonolsの誘導体を蓄積していた。また、中国の甘ガキは渋ガキと主生成物が異なっており、これにF3GalTaseの発現差が関与する可能性が考えられた。これらの結果から、中国の完全甘ガキにおいてこれまで単離された遺伝子の中で最も発現差の大きいF3GalTaseが直接タンニンの生合成に関わらない可能性を示唆しており、これまでの研究結果と併せて考えると、中国の完全甘ガキにおけるタンニン生合成の抑制は生合成を行う酵素遺伝子の発現量低下などの直接的要因によるものではない可能性が考えられた。一方、日本の完全甘ガキについては遺伝子群のQT-PCR解析により転写因子であるMYB等を含めた遺伝子群の発現の劇的な低下がタンニン生合成を直接的に減少させていることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)