2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01434
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岩田 幸訓 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 帰結 / 機会集合 / アローの不可能性定理 / 厚生主義定理 / 制約された定義域 / 帰結主義 / 非帰結主義 / 厚生主義 |
Research Abstract |
平成19年度の研究成果は、伝統的な厚生経済学に選択機会の内在的価値を明示的に取り込むために、選択対象が帰結と帰結が選択される機会集合の組からなると仮定し、厚生経済学やアロー型社会的選択理論に与える影響を検討した。平成19年度の研究はとりわけ、以下の3つの研究を進めた。 1.機会の豊かさを帰結の望ましさより相対的に重要視する非帰結主義者を機会集合に含まれる選択肢の望ましさを考慮した上でSuzumura and Xu(2001)とは異なるように定義し、その公理的特徴づけを与えた。さらに異なる非帰結主義者を特徴づける公理を比較した。この成果はMathematical Social Sciences誌において公表された。 2.帰結の望ましさを機会の豊かさよりも相対的に重要視する帰結主義者が社会に存在するとき、アローの不可能性定理への解決策を検討した。Suzumura and Xu(2004)による先行研究と比較して、本研究は以下の二つの点で重要である。第一に本研究は帰結主義者からなる社会の社会的選択ルールの定義域の構造的特質に注目し、アローの不可能性定理が成立するための十分条件を提示することによって、先行研究が追加的に要求していた公理は不可能性を導くのに不必要であることを示し、彼らの分析を拡張したことである。第二に本研究の結果の一部と先行研究で提示された定理が両立できないことを示すことによって、彼らの結果の反定理を導くことができたということである。この成果はThe First World Meeting of Public Choice Societyにおいて報告された。 3.この分析的枠組みを拡張して、厚生主義定理へ与える影響を検討した。人々の選択態度が帰結主義的である限り、厚生主義定理は依然として成立するが、機会の豊かさを必ずしも無視しなければ、厚生主義的な社会厚生評価を弱くすることが可能であることを示した。さらに、たった一人の非帰結主義者が社会に存在するだけで、非厚生主義的な社会厚生評価も可能であることを示した。この成果は日本経済学会秋季大会において報告された。
|
Research Products
(3 results)