2007 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージに発現する新規リパーゼを介した動脈硬化メカニズムの解析
Project/Area Number |
07J01519
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関谷 元博 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動脈硬化 / マクロファージ / コレステロールエステル |
Research Abstract |
今年度研究開始前にはMCEH欠損マクロファージでは中性コレステロールエステラーゼ(nCEH)活性が野生型の約50%になっていること、acetylated LDL(acLDL)による刺激で細胞内コレステロールエステル(CE)が約50%増加すること、[14C]オレイン酸を同時添加し、細胞内CEの放射活性の測定(formation assay)を行う、野生型の2.5倍に増加していること、細胞外へのコレステロール放出(efrlux)が約35%低下していることを報告していた。今年度研究でさらに以下のことを明らかにした。 1)MCEH欠損マクロファージを用いたin vitroの系でACAT活性は野生型と同等であった。泡沫化を制御する分子群の発現プロファイルにはMCEH欠損は影響しなかった。acLDLは非生理的な変性リポタンパクとされるが、より生理的な酸化LDLやbetaVLDLを用いても同様の結果が得られた。 2)In vivoでの動脈硬化への寄与を検討した。 apoE欠損背景においてMCEH欠損は血清脂質やリポタンパクプロファイルに影響することなく、動脈硬化病変面積を増大させた(en face aorta analysis:2.5倍、cross-sectional analysis:1.8倍)。 3)MCEH欠損マウスとHSL欠損マウスを交配し、二重欠損マウス(DKO)を作成、同様にin vitroの解析を行った。 MCEH欠損、 HSL欠損、DKOマクロファージのnCEH活性はそれぞれ野生型の50%、50%、10%であり、両者で未解明であったマクロファージのnCEH活性の約90%を説明することがわかった。acLDLを添加すると細胞内CE含量は野生型に比してそれぞれ約29%、約51%、約70%増加した。DKOマクロファージだけは変性リポタンパクによる刺激の非存在下でも細胞内CEを蓄積していた。acLDL添加時に[14C]-oleateを同時添加したときの取り込みはそれぞれ野生型に比して約1.3倍、約1.8倍、約2.6倍に増加していた。コレステールのeffluxは、それぞれ約11%、約21%、約44%低下していた。nCEHの逆反応であるACAT活性はDKOマクロファージでは約45%低下していた。リポタンパクの分解(Degradation)や取り込み(Association)には差を認めなかった。泡沫化に関わる分子群の発現にはこれら遺伝子の欠損は影響を与えなかった。こうした泡沫化実験においてMCEHとHSL欠損の効果はDKOマクロファージにおいて相加的に現れていた。 4)マクロファージのアポトーシスは動脈硬化病変の形成を強く修飾していることが知られている。早期病変では泡沫化細胞の減少により、病変か後期病変では変性脂質やタンパクなどの貧食が低下するため病変を量的質的に悪化させると考えられている。MCEH欠損マクロファージの透過を用いた観察により、MCEH欠損マウスは通常培養条件化にて、ごく軽度ながら野生型に比してアポトーシス細胞が増加していることが明らかになった。またこの表現型は酸化ステロールの一種である250Hコレステロールで刺激することにより著明に誘導されることが明らかになった。その分子生物機序に関してはunfolded protein response(UPR)が関与しており、UPRの誘導には酸化ステロールエステルの小胞体分画への蓄積が関与していることが判明したが、現在さらに詳細なメカニズム解明を試みている。
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