2007 Fiscal Year Annual Research Report
現代美術の教育における「抽象表現」の扱い方に関する理論と実技指導方法について
Project/Area Number |
07J01524
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
渡辺 美香 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・美術研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 美術教育 / 抽象表現 / 感性 / 写真表現 / 光 / アグネス・マーチン / モホリ=ナジ |
Research Abstract |
本研究は、現代美術の一つのジャンルである「抽象表現」が今まで美術教育の中で曖昧に扱われ、指導されずにいたことに対し、美術教育の重要な一分野として「抽象表現」の扱い方を理論化し、その実技指導方法を検討することを目的とする。本年度は、この目的にもとづき、実技制作と理論研究の両面から以下の考察を進めた。 1)アメリカ現代美術作家アグネス・マーチンの抽象絵画と精神性について 2)美術の教育者であり、作家であるモホリ=ナジの写真の実験的考察 3)写真表現による実技制作 1)、2)に関しては、アメリカでの現地調査、資料収集を行い、1)については、その成果を論文にした。2)は研究継続中である。3)に関しては、銀塩写真とアクリル版、LED光源を素材とした作品「静穏を聴く-逍遙遊-」を作成し、東京藝術大学大学美術館で展示発表を行った。 これらの研究による具体的な成果及び意義は、以下の2点にある。 1.実技制作と理論研究を並行して進めたことにより、表現における制作過程の重要性を見出した。「抽象表現」を(完成した)作品からのみ捉えてきた従来の解釈では、表現における精神と形の関係、感性とイメージの関係が曖昧にされてきたが、本研究では、制作過程に着目することにより、表現行為、心の状態、イメージの間の関係性を明らかにした。 2.感性を媒介とする「抽象表現」の特徴を浮かび上がらせると共に、感性を高めることを目的とする美術教育において、「抽象表現」を扱うことの重要性とその指導方法に対する可能性を見出すことができた。 今後、抽象表現の実技指導方法について実地に検討する。特に抽象表現を造形要素(光・色・物質など)によって画面を構築する初歩的な段階から、精神性を表現する高度な段階まで階層的に捉え、素材体験をもとにした指導案の作成を今後の課題とする。
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Research Products
(3 results)