2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代美術の教育における「抽象表現」の扱い方に関する理論と実技指導方法について
Project/Area Number |
07J01524
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 美香 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 美術教育 / 抽象表現 / ラスロー・モホリ・ナジ / 光 / 写真・映像 / アグネス・マーチン / 心・イメージ |
Research Abstract |
本研究は、現代美術の一つのジャンルである「抽象表現」の扱い方に関する理論と実技指導方法を実技制作と理論研究の両面から検討することを目的とする。本年度は、この目的にもとづき、その制作過程の重要な導入部である素材体験から造形要素を抽出する方法を以下3点から考察した。 1)バウハウスの教育実践に見られる造形発想法(モホリ=ナジの表現における新素材の取り組み) 2)アメリカを中心とする抽象絵画に見られる色彩と物質感 3)光、写真、映像、音を用いた実技制作 1)、2)に関しては、主にドイツ、アメリカでの現地調査、資料収集を行い、その成果を論文にした。3)に関しては、LED光源と光ファイバーを素材とした造形と音と映像を組み合わせた作品「Particle Pasage」を東京藝術大学で展示発表した。また、実技指導方法を構築する上で、ドイツの小学校における美術教育とイメージの発達に関する論文を執筆したベルリン自由大学のC.ヴルフ教授との議論、及び2006年に取材を行った東京都内の小学校での図画工作の実践事例をもとに、子どもの発達段階と美術の関わりについて整理した。 本研究の意義は、抽象表現の扱い方を探る上で実技制作と理論研究の両面から研究を進め、創作過程で起こる制作者の思考や発想をもとに、段階的に表現の展開を捉えた点にある。実技指導方法においては、抽象表現の初歩的な段階として、光・色・物質・空間などの素材(造形要素)に働きかける活動の体験を位置づけ、特に新たに獲得した視覚イメージを感情と結びつけた。また、造形行為において、イメージを生み出す源泉が素材の変化を受け止める意識にあることから、心の状態を外在化させ意識させることにより心の成長を促す抽象表現の可能性を提示した。
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Research Products
(4 results)