2007 Fiscal Year Annual Research Report
利益法学から評価法学へ-戦後初期のドイツ法律学方法論の変遷
Project/Area Number |
07J01534
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 寛 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 法律学方法論 / 利益法学 / 評価法学 / ヴェスターマン / ミュラー=エルツバッハ / フープマン / 因果的法思考 / 利益衡量論 |
Research Abstract |
今年度は、研究対象の1つであるフープマンの見解を特に彼の方法論について分析をはかり、併せてヴェスターマンとミュラー=エルツバッハの見解をまとめた。当初、検討を予定していた人格権については、その議論の深遠さのために断念せざるをえなかったが、いくつかのより重要な新しい知見を得られた。 まずヴェスターマンについては、彼の譲渡担保・所有権留保についての論稿・議論を検討し、ここに彼の多数派的評価法学の要素を方法論上内包していることを確認できた。これにより、彼を少数説として位置づける有力な見解に対して、その理解の一面性を指摘することができた。ミュラー=エルツバッハについては、彼の因果的法思考における評価の問題の位置づけについて、解明を図ることができた。フープマンについては、彼の方法論を前期(50年代)と後期(70年代)とに分け、その展開を整理した。彼の方法論を体系的な検討について先行業績がほとんど存在しないために、本研究は先駆的な試みであると言える。 また、ドイツでの最近の研究を入手し、それらを参考にしつつ、レーマンやザウアーといった当時の大家による当時の方法論の議論にスポットをあて、特にザウアーによる≪利益法学と評価法学≫とする学派の定式化とそこでのヴェスターマンの名指しを発見した。この点については学界においてこれまでほとんど注目されたことがないと思われる。この位置付けをもとに、≪利益法学から評価法学への展開≫について、研究対象の3者の方法論を試論として説明した。 以上の検討を、博士論文として完成・提出し、学位を取得した。本年度の最大の目的である、博論の完成・学位取得については、計画を達成した。 また、関西大学に所蔵の加藤新平文庫に赴き、方法論についての重要な資料を収集した。
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