2007 Fiscal Year Annual Research Report
軍人遺族扶助の展開に見る軍人未亡組織化要因の研究:アメリカ合衆国の事例から
Project/Area Number |
07J01539
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
望戸 愛果 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 軍隊 / 軍人遺族扶助 / 戦争未亡人 / 女性の組織活動 / ジェンダー |
Research Abstract |
平成19年度前半は、アメリカにおける戦争未亡人組織の組織化過程を、軍人遺族扶助行政の展開との関連の中で検証した。具体的には,主に以下の3つの作業を行った。1.アメリカにおける戦争未亡人をめぐる先行研究を総覧・整理し、慰霊事業と遺族補償年金の動向にのみ関心を狭く限定させる傾向があることを問題点として指摘した。2.連邦議会の議事録、各委員会の公聴会記録・報告書・参考資料等の1次資料の綿密な検討を行った。3.日本国内では入手不可能な軍人遺族扶助に関する1次資料の調査収集、現地の研究者との意見交換、および戦争未亡人関連組織が発行した機関誌・書簡・年次大会議事録・会員名簿・財務記録等の調査収集を行った。 平成19年度後半は、主に上記の調査研究の成果発表を行った。まず、「「豊かな社会」の戦争未亡人のために-1968年「未亡人GIビル」の成立にみるジェンダー規範の変遷-」と題した研究報告を日本社会学会大会(11月)にて行い、高い評価を得ることができた。さらに、本報告に基づいた研究論文をお茶の水社会学研究会編『Sociology Today』に投稿し、成果として発表した。 平成19年度中に得られた知見の概要は以下の通りである。1.第二次世界大戦後アメリカにおける最大の戦争未亡人組織は、軍人遺族補償年金の単純な増額ではなく、むしろ退役軍人に対する教育・訓練給付金(GIビル)の適用範囲を軍人遺族にまで拡大させることを組織の第一目標として掲げていた。2.「未亡人GIビル」の是非をめぐるジェンダー化された政治的論争はベトナム戦争開始後の1968年に至るまで続き、その間に政策立案者が扶助対象者として想定する「戦争未亡人」像にも大きな変化が見られた。
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Research Products
(2 results)