2008 Fiscal Year Annual Research Report
ブタ卵の受精と発生に及ぼす精子側因子の関与に関する研究
Project/Area Number |
07J01571
|
Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
中井 美智子 National Institute of Agrobiological Sciences, 生殖機構研究ユニット, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ブタ / 卵細胞質内精子注入 / 胚発生 / 卵活性化 / 受精 |
Research Abstract |
ブタでは、卵細胞質内精子注入(intracyto plasmic sperm injection:ICSI)卵と通常の受精卵との間には生理的現象や胚発生能において様々な相違点がある。これが何に由来するかを調べることは受精機構の解明に直結するため、本研究成果は発生工学技術の進展ならびに生物学的知見の集積に役立つ。 ブタのICSI卵における受精の不成立の主な原因の一つとして、雄性前核形成不全が挙げられている。我々はこれまでの研究で、ICSI卵における雄性前核形成不全が、精子の膜やクロマチンの凝縮状態ではなく、卵への人為的活性化誘起処理により大きな影響を受けていることを報告した。それでは、なぜICSI卵では通常受精のように精子による十分な卵活性化は誘起されないのかという点に疑問が生じる。これまで雄性前核形成を促進するため、精子への超音波処理、TritonX-100処理および耐凍剤なしの凍結-融解反復処理などが行われてきた。そこで、これらの処理が、精子の卵活性化誘起因子(phospholipase C zeta;PLCζ)含有量およびICSI後の前核形成率に及ぼす影響を調べた。 各区精子のPLCζ含有量をWestern blotting法を用いて解析した。その結果、各処理区精子のPLCζ含有量は、処理を行わない対照区精子に対し有意に低かった(p<0.05)。このことから、精子内のほとんどのPLCζは、精子処理後に失われていることが明らかとなった。さらに、処理精子を用いて作製したICSI卵の雄性前核形成率は、対照区に対し有意に低かった(p<0.05)。 以上の結果から、精子膜の損傷および除去処理が、精子のPLCζ含有量を減少させていることが明らかとなった。さらに、このPLCζ含有量の低下が、卵細胞質内へ注入された精子が雄性前核へと進行するために必要とされる十分な卵の活性化の不足を引き起こす原因の一つであることが示唆された。
|
Research Products
(5 results)