Research Abstract |
【研究背景,目的】「エアロゾル・雲の化学・動力学過程の有機的結合と,気候化学モデルによる気候変動評価」を遂行するためには,従来のモデルにはない新たなアプローチが不可欠である.従来の化学輸送モデルでは,粒子の化学組成や粒径分布が考慮されることは多いものの,その混合状態が正確に表現することは計算機資源の制約もありほとんどない.そこで申請者は,エアロゾル-雲-大気放射相互作用を考える上で極めて重要となる,エアロゾルの化学組成,粒径分布,混合状態,粒子形状を表現できる新しいエアロゾル動力学モジュールMADMS(Modal Aerosol Dynamics model for multiple Modes and arbitral Shapes)を開発し,それを3次元エアロゾル化学輸送モデルEMTACS(Eulerian,Multiscale,Tropospheric,Aerosol dynamics and Chemistry Simulator)に組み込んだ. 【MADMSの概要と特徴】エアロゾルの凝縮,凝集過程などの動力学過程を定式化した数値モデルのひとつにMADモデル(Modal Aerosol Dyanmics model;Whitby and Mcmurry,1997)があり,現在でも多くの化学輸送モデルに組み込まれている.しかし,MADモデルでは粒径分布の大きく異なる粒子同士の凝集過程は原理的に計算出来ないので,東アジア域で見られる数100nmの煤粒子と数mmの黄砂が併合した凝集体は表現出来ない.また,MADモデルは球形が仮定されているが,煤粒子は通常フラクタル次元が2に近い凝集体として観察され,球形とは大きく異なる,申請者は,MADモデルの従来の定式化を拡張して,それらの計算を可能にした,このモジュールはまだ世界に例は無く,現在Journal of Colloid and Interfacial Sciences誌に投稿準備中である.
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