2007 Fiscal Year Annual Research Report
TRAILによる細胞死誘導機構の解析とその耐性の克服
Project/Area Number |
07J01621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 浩 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | がん / 耐性 / シグナル伝達 / アポトーシス |
Research Abstract |
代表者は、がん細胞におけるTRAIL誘導性細胞死の解明を目的として、質量分析を用いTRAIL受容体の新規結合タンパク質PRMT5を見出した。このPRMT5はTNFRスーパーファミリーの中でもTRAIL受容体であるDR4/DR5と選択的に結合した。PRMT5を標的とするsiRNAを導入した各種がん細胞ではTRAILによる細胞毒性が増加したが、正常線維芽細胞株では感受性化は認められなかった。また、PRMT5を安定発現するHCTIl6細胞を樹立したところ、TRAILへの耐性を示した。以上より、がん細胞においてPRMT5はTRAILが誘導する細胞死を抑制していることが明らかになった。さらに、PRMT5ノックダウン時にはTRAILが誘導するlkappaBalpha分解が阻害されることを見出した。このlkappaBalpha分解阻害は、上流のIKK複合体のキナーゼ活性抑制に起因することと、TNF処理時には見られず、TRAIL刺激選択的であることが示唆された。次に、IkappaBalphaの下流に位置するNF-kappaBの活性化を定量した。TRAILによるNF-kappaB活性化はPRMT5ノックダウンにより顕著に減弱したが、 TNF刺激では大きな変化は見られなかった。さらに、PRMT5をノックダウンしたHT1080細胞にGFPタグを付加した活性化型のIKKbetaを遺伝子導入したところ、活性化型IKKbetaの発現はTRAILによるアポトーシスを大幅に減少させた。これらの結果から、PRMT5はNF-kappaBの活性化を介してTRAILによるアポトーシスを阻害していることが考えられる。TRAILの臨床応用を進める上では、一部のがん細胞が示す耐性の克服が大きな課題となる。本研究の成果から、PRMT5を分子標的とすることによってTRAILの抗腫瘍効果を選択的に増強できる可能性が期待される。
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