2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦後日本における参加型市民社会の動員構造の成過程に関する社会学的研究
Project/Area Number |
07J01626
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
仁平 典宏 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 市民社会 / 動員 / ボランティア / NPO・NGO / 社会学 / ネオリベラリズム |
Research Abstract |
今年度は、「市民社会」への参加/動員構造について、国際比較の中での日本の位置と、近年のネオリベラリズムという文脈下での様相について分析することに主要な焦点を当てた。 第一に、福祉国家と参加型市民社会の関係について国際比較分析を行った。福祉国家と市民活動については、これまで相互排除的な関係にあると見なされることが多かった。つまり、福祉国家が伸長すると市民の自発的な活動抑制され、一方で、市民の参加活動の増大は福祉国家の縮小やネオリベラリズムという文脈と軌を一にしてしまうという、トレードオフの関係が指摘されることが多かった。この関係の妥当性を検討することが、本研究プロジェクトの目的でもある。本研究では、OECDデータ及びWorld Value Surveyデータを用いて、政府の社会保障支出の度合いと市民活動の活発さの相関分析を行い、その結果、両者のトレードオフ関係が必ずしも生じているわけではないことを明らかにした。しかし、日本に関しては、社会保障支出と参加活動とが共に低位にある点で特徴的な位置を占め、その中でトレードオフが生じやすいことを指摘した。第二に、上記のような日本における福祉国家-市民社会関係が成立してしまう背景を、NPOやボランティアを巡る言説や政策文書の分析を通して考察した。1990年代前半においては、福祉のための支出が増大する中で、ボランティアが積極的に政策的に位置づけられていき、両者の関係はポジティブな相互作用の中にある。ところが1990年代後半から2000年代前半にかけて、NPOやボランティアは、いわゆる「構造改革」の文脈下で、福祉支出抑制のために位置づけられるようになる。その上でNPOは経営的・経済的合理性という観点から評価されるようになり、その政治的・公共哲学的な位相についての議論は後景化していった。
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