2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01628
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下村 周太郎 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本中世史 / 日本国家史 / 中世国家 / 鎌倉幕府 / 征夷大将軍 / 源頼朝 / 陰陽道 |
Research Abstract |
本研究課題は、日本の中世に存在した鎌倉幕府という権力体が、日本の「国家」の歴史の中でいかに位置付くのかを、当時の人々が幕府をどのように捉えていたのか、という同時代の心性に着目することで追究するものである。中世国家には、近代国家のように主権や領土といった客観的な存立要件はない。そこで、人々の心性やイデオロギーといった主観的な要件から、幕府の位置を探るのである。今年度、具体的に以下の三点を検討した。 1。幕府を創始した源頼朝が「大将軍」という官職を朝廷に要請したことについて。「大将軍」は武士社会で尊ばれる「将軍」に勝る権威として持ち出されたものであり、武士社会の統合という幕府成立期の政治的要請に基づくものであった。このことは、朝廷と異なる独自の秩序の創出を志向するが、その一方で、武士社会での権威が朝廷の官職によって補強されることも意味し、幕府の朝廷に対する従属性も見出される。幕府の心性としては、朝廷に対する自立と従属の両面が看取され、この二面性の具体的解明が鎌倉幕府の国家論的研究の重要な論点であることを確認した。 2。鎌倉幕府と陰陽師との関係の解明。鎌倉幕府が京都の官人陰陽師を導入・編成した過程を再検討し、それが国家の統治イデオロギーにおいて重要な天文政策の鎌倉における自律的な実践を目的としていたことを指摘した。そして、天変や戦争に際しての幕府に専属した関東陰陽師の言動が、幕府における「関東」のアイデンティティや自立的統治意識の形成に重要な影響を与えたと考えた。 3。鎌倉幕府における故実や先例の在り方の検討。中世においては過去の事例の吉凶や有無が現実の支配における正当性や正統性を規定したが、鎌倉幕府において重視された故実や先例を検討することで、幕府の権威・権力の特質と変遷を考究した。
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Research Products
(2 results)