2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01628
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下村 周太郎 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本中世史 / 鎌倉幕府 / 中世国家 / 日本国家史 / 故実 / 先例 / 源頼朝 / 不易法 |
Research Abstract |
本研究は、同時代人の心性や、「国家」の本質が垣間見える非常時に注目するという独自の視角から、鎌倉幕府を日本国家史上に位置付けることを目的とする。特に、非常時における鎌倉幕府の自己認識に着目し、鎌倉幕府が当時の政治社会の中で、自己をいかに捉えていたのか、また、その自己認識の下にいかなる政治実践を行っていたのか、などを検討している。以下、本年度の検討結果を2点にまとめて記す。 第一に、治承・寿永の戦争の実態と心性の両面を踏まえながら、鎌倉幕府における自己認識の特質を時系列的に分析し、幕府の性格とその変容を検討した。鎌倉幕府成立期において源頼朝は、歴代源氏父祖の故実や藤原秀郷の故実を重んじるが、これらは源氏統合・平氏追討の論理として持ち出されたものであり、成立期の鎌倉幕府については治承・寿永戦争期における一武装勢力としての性格が顕著である。これに対し、頼朝死後、承久の乱などを経験する中で、関東草創の記憶を随伴する頼朝時代を核に「関東」のアイデンティティが生起し、朝廷を相対化する志向が醸成される。こうした鎌倉幕府の自己認識は、当該期の「国家」における分節要因として重要である。 第二に、鎌倉幕府不易法の適用年代に関する通説を再検討することで、鎌倉幕府政治の史的展開を検討した。鎌倉幕府不易法の適用年代の基準が将軍→執権→得宗と変遷することを指摘し、同時代人の心性に留意する立場から幕府の史的展開を将軍成敗期→執権成敗期→得宗成敗期の三段階として捉え直し、その際、時宗の評価が彼の死後に執権から得宗へと変化することに注意した。
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Research Products
(2 results)