2007 Fiscal Year Annual Research Report
生態系発達の初期過程における土壌微生物群集の成立とその制限要因
Project/Area Number |
07J01644
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉竹 晋平 Hiroshima University, 大学院・生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 土壌微生物 / 呼吸活性 / バイオマス / 群集構造 / リン脂質脂肪酸分析 / 荒原生態系 / 生態系発達 / 基質制限 |
Research Abstract |
本年度は、生態系発達の初期過程における土壌微生物のバイオマスや呼吸活性に対する基質制限を明らかにすることを目的として、以下の点について実施した。 1.昨年度に鳥取県・弓ケ浜の海浜荒原で得られていた、植生の帯状分布に沿った土壌微生物相の変化に関するデータをまとめ、論文を投稿した(Australian Journal of Soil Research誌、査読中)。 2.海浜荒原から採取した土壌に対して基質添加実験を実施した。土壌呼吸測定とリン脂質脂肪酸分析を行い、土壌微生物の呼吸活性・バイオマス・群集構造の変化について調べた。その結果、海浜荒原では一次的には易分解性C源の不足によって呼吸活性が抑制されていることが明らかとなった。また、基質の質がバイオマスの増加や群集構造の変化パターンに大きく影響していることが示唆された。 3.昨年度までに調査・研究を行った硫気荒原や寒地荒原で得られた結果と、本年度に海浜荒原で得られた結果を総合し、一般的な生態系発達の初期過程における土壌微生物群集の発達プロセスとそのメカニズムについて検討した。その結果、全く異なる要因によって成立している複数の荒原生態系においても、生態系発達に伴う土壌微生物のバイオマスの増加や、群集構造の変化にはある程度一貫性があることが明らかとなった。そしてそれらの変化に対してはいずれの荒原においても土壌有機物の蓄積が非常に重要であることが示された。これらの結果について博士学位論文にまとめた。 本年度で得られた以上のような成果は、研究例の少ない荒原生態系における土壌微生物群集に関する基礎情報となるだけでなく、より一般的な生態系の発達初期における微生物群集の成立・発達の具体的なメカニズムや、その後の微生物群集の発達プロセスを考える上で非常に重要な知見であると考えられる。
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