2008 Fiscal Year Annual Research Report
両眼立体視における並列処理メカニズム-心理物理および電気生理学的手法による検討-
Project/Area Number |
07J01662
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 隆弘 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 視覚 / 両眼対応点問題 / ランダムドットステレオグラム / 両眼視差 / 腹側視覚経路 / 背側視覚経路 / モデリング |
Research Abstract |
大脳皮質の背側視覚経路の細胞は,左右網膜像の間の相関を基に両眼視差を計算する(相関計算).一方,腹側視覚経路の細胞は左右眼像の間の対応を基に視差を計算する(対応計算).これまでに,ヒト心理物理学実験を行い,細かい奥行き知覚は対応計算に依存し,粗い奥行き知覚は対応計算と相関計算の両方に依存することを見出した.今年度は,対応計算の(1)再定式化と(2)生理学的な知見を考慮したモデル化を行った.(1)対応計算はこれまで,再帰的なアルゴリズムを用いて定式化されてきた.しかし,腹側経路細胞の応答を説明するためには,より単純な定式化で十分かもしれない.そこで今回,相関計算とよく似た単純な形で対応計算を定式化し直した.対応計算の再定式化は,二種類の視差計算の違いを明確にしたのみならず,対応計算を行う細胞の反応特性について,実験的に検証可能な予測を新たに与えた.(2)これまでは,相関計算と対応計算によって導かれた視差表現を組み合わせることで,被験者の奥行き判断を説明いてきた.しかし,実際の脳内においては,まず初期視覚野の細胞が相関計算によって視差を符号化する.従って腹側経路は,相関計算の出力をもとに,対応計算を行うと考えられる.より脳内の処理に近い形で視差清報処理を理解するために,相関計算の出力が対応計算の出力へと変換される過程を検討した.局所的な相関計算を行う,両眼視差エネルギーモデルユニットの応答に,非線形処理を加えることで,対応計算をモデル化することができた.この結果は腹側経路が,相関計算を行う初期視覚野細胞の応答を非線形に変換することで,質的に異なる対応計算を行っていることを示唆する.
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