2007 Fiscal Year Annual Research Report
両眼立体視における並列処理メカニズム-心理物理および電気生理学的手法による検討-
Project/Area Number |
07J01662
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 隆弘 Osaka University, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 視覚 / 両眼対応点問題 / ランダムドットステレオグラム / 両眼視差 / 腹側視覚経路 / 背側視覚経路 |
Research Abstract |
大脳皮質視覚領野が行っている並列情報処理が、両眼立体視にどのような役割を果たすのか。本研究は心理物理実験と電気生理実験を組み合わせ、多面的にアプローチすることでこの問題の解明を目指す。本年度はヒトを対象とした心理物理実験を行った。これまでに4人の被験者に対し実験を行い、相関を基にした奥行き符号化と対応を基にした奥行き符号化が、それぞれ大きいスケールの奥行き知覚と小さいスケールの奥行き知覚に寄与することを見出した。さらに二つの実験を行い、以下のことを見出した。1、ヒトは左右の輝度コントラストが反転した、(逆相関した)、両眼対応のない刺激に対して、視差から導かれる奥行きとは反対の奥行きを知覚することが知られている。この反対奥行き知覚は、「相関を基にした奥行き符号化が、立体視に直接利用される」ことの証拠と考えられている。しかし「視差刺激が引き起こした眼球運動によって網膜像が変化し、その結果として反対の奥行きを知覚している」という可能性はこれまで検討されていない。一つ目の実験では、眼球運動の潜時よりも短い刺激呈示時間(90ミリ秒)においても、反対奥行き知覚が生じることを6人の被験者について確かめた。この結果は、輻輳解散運動が原因の網膜像変化が,反対奥行き知覚を引き起こした可能性を排除する。2、二つ目の実験では、対応を基にした奥行き符号化が、相関を基にした符号化と全く独立な処理なのか、それとも二つの符号化が、初期段階では同じ処理を行っているのか検討した。対応を基にした符号化のみが利用される条件で、刺激に含まれる局所相関のばらつきを変化させた。局所相関にばらつきがある条件ではヒトは奥行きを知覚できた。しかし、局所相関が常にゼロのときは、奥行きを知覚できなかった。この結果は、対応を基にした奥行き符号化が、相関を基にした符号化と、初期段階では共通の局所情報処理をしている可能性を支持する。
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