2007 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算による圧力誘起構造の特定および圧力誘起超伝導の研究
Project/Area Number |
07J01723
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石河 孝洋 Osaka University, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高圧 / 第一原理計算 / メタダイナミクスシミュレーション / 圧力誘起構造相転移 / 圧力誘起超伝導転移 / カルシウム |
Research Abstract |
カルシウムは単純立方構造をとるCa-III相(32〜113GPa)で圧力誘起超伝導転移を示し、超伝導転移温度が圧力と共に上昇し、Ca-IV相(113〜139GPa)で20Kを超えて、Ca-V相(139GPa〜)で25Kに到達することが実験により観測されている。この25Kという値は単体元素最高値であり、高圧縮カルシウムが高い超伝導転移温度を示す原因に注目が集まっている。しかしながらCa-IV相とCa-V相の結晶構造は対称性の低い複雑構造となっており、特定されていない。平成19年度の研究において、第一原理メタダイナミクスシミュレーションにより、Ca-IV相とCa-V相の結晶構造特定を行った。その結果、Ca-IV相は原子位置が4回螺旋変調をとる複雑構造、Ca-V相は原子位置がジグザグ変調をとる複雑構造となることが明らかになった。これらのX線回折パターンは実験データと非常に良い一致を示した。この結果はPhysical Review BのRapid Communicationsに発表した。結晶構造が特定できたことは詳細な電子構造の決定が可能となったことを意味する。そこでCa-V相のジグザグ構造についてカルシウムがフォノン媒体の超伝導であると仮定し、Allen-Dynesの式を用いて超伝導転移温度を評価した。その結果、18〜20Kという実験値に近い超伝導転移温度を得ることが出来た。電子との強い相互作用を示すフォノンを解析していくことで、カルシウムにおける高い超伝導転移温度の原因を理論的に解明していくことが可能となった。今後はその解析により得られる知見から、高い転移温度をもつ超伝導物質探索のための指針を与えていく。
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