2008 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線生成核種を用いた風化土層の発達速度と流域の侵食速度の定量
Project/Area Number |
07J01748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松四 雄騎 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 侵食速度 / 土層 / 花崗岩 / 加速器質量分析 / 地形発達 / 流域 / 土砂 |
Research Abstract |
山地流域の出口に堆積した砂礫中の石英粒子に含まれる宇宙線生成核種を加速器質量分析によって定量し,上流域の長期的な平均侵食速度を決定した.対象としたのは,北アルプスの東縁に位置し,花崗岩を基盤とする芦間川流域(12km^2)および,その内部に位置する9つの支流域である.求められた芦間川流域の侵食速度は,0.58±0.08mm yr^<-1>であり,松本盆地の沖積面上に発達する扇状地の体積および,後氷期に開析された斜面の推定侵食深から計算される値と極めて調和的であった. 支流域の侵食速度は,0.19±0.02mm yr^<-1>から1.9±0.3mm yr^<-1>まで,支流ごとに異なる値を示した.このことは,各支流において,斜面土層の平均生成速度に最大10倍程度の差異があることを意味する.地理情報システムソフトウェアを用いた地形解析によって各支流域の平均傾斜を求め,侵食速度と比較したところ,支流域の侵食速度は流域斜面の平均傾斜の増大とともに指数関数的に増大する傾向があるが,平均傾斜が38°を超えるような流域においては,急激に減少するということがわかった.これは,傾斜があまりに大きい斜面においては土層が維持できず,崩壊による侵食がかえって進行しにくくなるといった現象を捉えている可能性がある. 以上の結果は,わが国において初めて,宇宙線生成核種を山地流域の侵食速度の推定に適用したものである.これにより,流域からの土砂生産の量的把握のみならず,流域内における土砂生産源の特定に,宇宙線生成核種が応用可能であることを示すことができた.こうした知見は,ダム建設や砂防計画といった流域圏のマネジメントにおいて,その方策の躍進的な向上に資する情報として期待できる.得られた成果は,加速器質量分析に関する国際学会および地形学に関する国内の学会で発表した.また,得られたデータを用いて論文を執筆し,国際誌に投稿した.
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Research Products
(2 results)