2007 Fiscal Year Annual Research Report
J.ロックの経済思想におけるコンテクスト研究:植民地問題を中心に
Project/Area Number |
07J01764
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
門 亜樹子 Kwansei Gakuin University, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ジョン・ロック / 集団帰化 / ユグノー / 宗教的寛容 / 広教主義 / 市民権 / 国籍取得者 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画調書の一年次の研究を中心に行った。Cranston(1957)、Woolhouse(2005)による両ロック伝を比較検討し、ロックの広教主義と救貧思想におけるソシヌス主義者T.ファーミンの重要性に着目するとともに、17世紀後半のヨーロッパの宗教的不寛容及び「普遍的宗教的寛容」の展開について論じたMarshall(2006)に着想を得、ロック思想におけるユグノー亡命者の影響に着目した。この結果、従来の研究で扱われることが少なかったロックの「集団帰化」草稿(1693)に焦点をあて、草稿執筆の背景を精査するとともに、草稿の時論的・経済論的側面だけでなく、政治理論、宗教的寛容をも含む総合的観点から、ロック思想における草稿の意義を明確にするべく、以下の研究を進めることになった。1.草稿執筆の背景として、(1)イングランドの帰化法制度の概略、(2)ナント勅令廃止後のユグノー亡命者のイングランドでの受容の実態、(3)下院での集団帰化法案の審議過程、(4)当時の集団帰化擁護論及び反対論、以上四点について、EEBO、ゴールドスミス・クレスのマイクロ資料、英国上院・下院議事録等から資料蒐集・調査を行った。2.(1)草稿の議論と、経済に関する諸著作で展開された低賃金労働論及び貧民観との共通性について分析した。(2)主著『統治二論』における国籍取得者と在住外国人の区別、『寛容支持第三書簡』での、コモンウェルスの市民権を有する成員としての、帰化した外国人及び国籍取得者の位置づけを明らかにした。(3)異教徒への宗教的寛容の支持、ユグノー迫害に対するロックの認識、さらに、高教会派J.プロウストの『寛容書簡の議論を手短に考察し、それに答える』序文等の記述により、同草稿の思想的背景として、宗教的寛容が存在していた可能性を提起した。以上の研究成果を、学会発表で公表し、論文にまとめた。
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Research Products
(2 results)