2007 Fiscal Year Annual Research Report
オントロジカルな環境内行為論:ハイデガーの<行為>概念に基づく展開と構築
Project/Area Number |
07J01799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 喬 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハイデガー / 行為 / 志向性 / 実在性 / 実在問題 |
Research Abstract |
本研究は、初期ハイデガーの哲学を、(1)主観の表象作用ではなくむしろ環境内行為として人間の志向性を解明する方法の確立という点から統一的に解釈、(2)志向性の行為論的転換を通じて自己・世界・存在者といった存在論的基礎範疇の根本的な見直しを迫るハイデガーの企図を明瞭にし、(3)これらに基づいて、現象学や認知科学の知見を総合した「オントロジカルな<環境内行為論>」の展開と構築を最終的に目ざすものである。 本年度(平成十八年度)の研究においてはまず、ハイデガーが博士課程在籍時に執筆した諸論文からごく初期の講義録を読解、上述の(1)および(2)の解釈がこの時のハイデガーの思考に的中していることを明らかにする論文(「作用から行為へ-初期ハイデガーの意味埋論」を公刊した。その際、ハイデガー解釈上の新たな論点として提示されたのは、ハイデガーがフッサールの「作用(Akt)」概念から、この語に示唆されている行為性格を最大限に引き出して、これを状況内行為として独自に解釈・更新しているということであった。 初期バイデガーの行為論的な志向性の転換は、初期ハイデガーの問題意識において、伝統的な存在論的範疇である「実在性(Realitat)」概念を、主観から独立に実在するという伝統的な意咲ではなく、行為者の環境を形成しつつう一定の行為可能性を指示するという意味で捉え直すことに直結している。この概念的変更によってハイデガーが外部世界の存在証明という所謂「実在問題」の解消を目ざしていることを解明し、二つの国際学会で発表した。また、ハイデガーが「頽落」という-良く知られてはいるが、その存在論的意図が理解されてない-概念で論及しているものも、世界がその存在自体を認識者によって証明されねばならない程に人間から疎遠に、独立して表象されていく傾向に他ならないという新視点を提示する研究発表を国内で行った。
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