2008 Fiscal Year Annual Research Report
オントロジカルな環境内行為論:ハイデガーの<行為>概念に基づく展開と構築
Project/Area Number |
07J01799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 喬 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハイデガー / 現象学 / 行為 / 実践知 / 発話行為 / 時間性 |
Research Abstract |
まず、平成二〇年度には、前年度からの継続として、初期ハイデガー哲学の環境内行為論としての意義と射程を検討、その成果を二つの学会で口頭発表した。 1.平成二〇年五月、第六七回日本哲学会大会において「ハイデガーの「世人」概念と実践知の問題」と題して研究発表を行い、従来その哲学的意義が判明にされていない「世人」の概念が、アリストテレスの実践知(技術知の規則的適用)に対する解釈に由来することを初期講義録の精読によって解明、行為者論としての意義を明確にした。 2.平成二〇年十一月、第三十回日本現象学会大会にて「『存在と時間』における発話概念と命題に対する実存論的アプローチ」と題して研究発表を行った。そこでは、ハイデガーの言語論の中核に、アリストテレスの「声」の概念を引き継いだ独特の発話概念があることを指摘するとともに、彼の言語論が、命題の表現内容ではなく、複数の話し手による発話行為に定位するものであることを解明、その沈黙論も含めて<発話の現象学>という新たな言語行為論の可能性を提示した。この発表と同内容の論文は、『現象学年報』第二五号に掲載される。 次に、初期ハイデガーにおける環境内行為論の研究から一歩進み、この研究を現象学のより広い文脈に位置づけることが試みられた。 1.平成二〇年十二月、第二五回日本現象学・社会科学会において開催されたシンポジウム「現象学的行為論の可能性」にパネリストとして参加、「志向性・語り・行為-ハイデガーの現象学的行為論」と題する報告を行い、特にフッサールの実践哲学とハイデガーの環境内行為論との関係や、ハイデガーのプラグマティズム的解釈に対する評価を論じた。この報告の内容は、成城大学大学院紀要『ヨーロッパ文化研究』第二八集に掲載された。 2.平成二一年三月、第八回フッサール研究会において独語で行われたシンポジウ"Was ist Erfahrung?Kritische Auseinandersetzung mit dem phanomenologischen Erfahrungsbegriff"にパネリストとして参加、"Begegnung,Zeug und Zeitlichkeit:Zum phanomenologischen Erfahrungsbegriff bei Heidegger"と題する発表を行い、初期ハイデガーにおける「事実的な生経験」の概念が後の環境世界内行為論に結実する思想展開と、その展開におけるアリストテレスのフロネーシス論の影響を、「瞬間」を中心とする行為者の時間性をも視野に収めて論じた。
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