2009 Fiscal Year Annual Research Report
オントロジカルな環境内行為論:ハイデガーの<行為>概念に基づく展開と構築
Project/Area Number |
07J01799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 喬 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハイデガー / 現象学 / 行為 / 実在 / 経験 |
Research Abstract |
本研究「オントロジカルな環境内行為論-ハイデガーの<行為>概念に基づく展開と構築」の最終年度にあたる平成二一年度には、本研究の三つの主要課題である(1)初期ハイデガー研究、(2)フッサールをはじめとする現象学研究、(3)認知科学の動向調査のそれぞれについて以下のような成果を挙げた。(1)初期ハイデガー研究についてはまず、本研究計画の柱であった本国での新資料整備という目的達成に向けて、初期講義録の一冊を翻訳・出版することができた(ハイデッガー全集58巻『現象学の根本問題』虫明茂との共訳)。また、初期ハイデガー研究の成果を活かした二本の論文が公刊された。まず、『存在と時間』の発話作用や言語行為の分析がもつ哲学的含蓄をアリストテレスの「声(フォネー)」の概念との比較検討の上で明らかにした論文が「現象学年報」に掲載された。この論文は本研究の目指す環境内行為論を特に言語行為論の面から展開したものである。さらに、行為者にとっての環境世界の実在性をめぐって、『存在と時間』第一篇の道具的存在性の議論を「存在者的実在論」として提示、その妥当性をハイデガーによるアリストテレス『自然学』の解釈から跡づける論文が「哲学・科学史論叢」に掲載された。この論文は、ハイデガーの環境内行為論がもつ存在論的主張を、ドレイファスやカーマンらの先行するハイデガー実在論研究への批判的取組みの中から最大限に引き出したものである。(2)フッサールをはじめとする現象学研究については、まず、日本現象学会第三一回大会にて英語で行われたシンポジウム「今日の世界の哲学状況におけるフッサール現象学の射程(邦題)」において、Sodertorns大学(スウェーデン)教授ハンス・ルイン氏と東洋大学講師武内大氏の発表に対するコメンテーターという立場で、フッサール現象学の今日的意義について発表・討議した。この発表では、ハイデガーの環境世界との関連の深い後期フッサールの生活世界論がもちうる反自然主義としての哲学的射程を主に論じた(その内容は次号「現象学年報」に掲載される)。また、フッサールに関する国内唯一の専門的研究機関である「フッサール研究会」の年報に、初期ハイデガーが環境世界体験や事実的生経験と呼んだものと『イデーンII』におけるフッサールの環境世界論の関係を明らかにする論文が掲載される。(3)最後に、認知科学の動向調査については、S.ギャラガーとD.ザハヴィという現在最も注目されている、現象学派の「心の哲学」論者による共著(The Phenomenological Mind : an Introduction to Philosophy of Mind and Cognitive Science)の翻訳に従事した(石原孝二監訳で勁草書房から出版予定)。
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Research Products
(5 results)