2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J01832
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山田 篤史 The University of Tokyo, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 重い電子系 / 光電子分光 / ルテニウム酸化物 |
Research Abstract |
層状Ru酸化物Ca2-xSrxRuO4系は、多軌道バンド幅制御モット転移を研究するのに良い対象物質である。モット絶縁体近傍の金属領域(0.2〓x<0.5)において、T^*以下で質量増大を示すことが熱、磁気、輸送特性によって報告されている。系のバンド幅制御モット転移を説明するためのモデルとして、軌道選択モット転移(OSMT)シナリオが提案された。OSMTでは、より狭いバンド幅(1eV)をもつalpha,betaバンドがx=0.5において初めにモットギャップを開き、局在スピンの性質を現す。一方で、より広いバンド幅(2eV)をもつgammaバンドはx=0.2においても遍歴的なままである。しかしながら、最近の実験事実はOSMTに疑問を投げかけており、この系に対する理解は依然として混沌としていた。そこで、モット転移の相境界にあるx=0.2のEF近傍のバンド分散を高分解能角度分解光電子分光(ARPES)によって調べることで、上述したようなシナリオの妥当性を議論すると共に、その強い質量増大の起源を明らかにすることを目的として研究を行った。Ca1.8Sr0.2RuO4において、波数空間の一部でのみ重いバンド分散が観測された。重いバンド分散を形成する準粒子ピークの温度依存性は、T^*以下での質量増大のクロスオーバーと対応することが分かった。f電子系においてフェルミ面全体に渡って起こる重い電子状態とは異なり、Ca1.8Sr0.2RuO4の質量増大は波数空間の一部でのみ起こることから、その質量増大を議論する際は、多軌道と同時に、全体のバンド幅だけでなく局所的なバンド構造も考慮することが重要であることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)