2007 Fiscal Year Annual Research Report
高山植物を例にした分断分布に伴うゲノム分化が引き起こす種分化機構の解明
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07J01858
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 啓 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 高山植物 / ゲノム進化 / 系統地理 / 分断分布 |
Research Abstract |
本年度始めた研究としては、よりゲノムレベルでの研究を行うため、扱う材料を分子遺伝学のモデル植物であるシロイヌナズナ(アブラナ科)の近縁種であるミヤマタネツケバナに絞ることから着手した。そのため、ミヤマタネツケバナの全分布域に見られる遺伝的構造を明らかにするため、系統地理的な解析を行った。これまでは葉緑体DNAを用いた仕事が主であったが、シロイヌナズナのゲノム情報が近縁種にどこまで適用できるかを検討することも含めて、葉緑体DNAに加えて、核遺伝子の塩基配列を決定することを目指した。そのため、核遺伝子のデータに基づく系統地理の結果を出すことができ、葉緑体だけでなく核ゲノムに関しても、日本固有高山植物であるミヤマタネツケバナは中部地方と東北地方・北海道の間で、異なる遺伝的組成を持つことが示され、多くの高山植物で見られるように、両地域の間で分断分布を経てきたことが明らかとされた。この結果は、平成19年9月の植物学会で発表し、その後Molecular Ecologyに投稿し、年度末にわずかな修正を条件に採録されることが決定した。さらに、複数の核遺伝子座の塩基配列データを用いることで、集団遺伝学のモデルを適用し、これまでの系統地理的な考察をより客観的に示すことを行った。その結果、ミヤマタネツケバナは中部地方と東北地方以北のものとでは、一旦分断が起こった後には、遺伝的な交流を経ることなく、分断され続けたことが示された。この結果は、平成20年3月の生態学会・植物分類学会で発表することができた上、すでに論文として投稿直前である。このように、本年度はミヤマタネツケバナという日本固有の高山植物が、更新世の気候変動とそれに伴う分布変遷の中で、中部地方と東北地方・北海道の山岳では、完全に分断されたものとして維持されてきたことをより客観的に示し、機能的な核遺伝子のレベルで大きく分化していることを明らかとしてきた。
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Research Products
(5 results)