2007 Fiscal Year Annual Research Report
サイコクカマアシムシの発生学的研究-六脚類の高次系統・グラウンドプランの再構築-
Project/Area Number |
07J01930
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福井 眞生子 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員
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Keywords | 比較発生学 / 六脚類 / 内顎類 / カマアシムシ目 / 内顎口 / 神経形成 / 腹器 / ベーサルクレード |
Research Abstract |
「内顎類-外顎類システム」(「内顎類[=欠尾類(=カマアシムシ目+トビムシ目)+双尾類(=コムシ目)]+外顎類[=単関節丘類(=イジノミ目)+双関節丘類(=シミ目+有翅昆虫類)]」と表記できる)は六脚類の高次系統体系として広く受け入れられてきた。近年になってさまざまな分野から、「内顎類」のステータスや構成群の類縁に関して、問題点が指摘されてきたが、いまだ議論は定まっていない。節足動物の高次系統については、鋏角類+大顎類[=甲殻類+欠第二触角類(=多足類+六脚類)]という従来の体系に対し、近年の分子系統学の系統学の多くが汎甲殻類Pancrustacea(=甲殻類+六脚類)を支持するなど、混迷を極めている。 ここにおいて、六脚類の最ベーサル・クレードとされるカマアシムシ目は非常に重要である。本研究の目的は、六脚類の最ベーサル・クレードと目されるカマアシムシ目の発生学的知見を初めて明らかにすることにより、昆虫類の高次系統を比較発生学的立場から明確に再構築することにある。 本年度は、カマアシムシの胚発生をさらに厳密に検討した。飼育・採卵・解剖法の開発・改良により、蛍光顕微鏡、SEMおよびタイムラプスビデオ撮影による詳細な内顎口形成の観察を行った結果、カマアシムシ類の口摺は、1)大顎・小顎・下唇体節背板に由来する、2)顎部後方で左右の口摺が融合し内顎口を形成するという点でトビムシ・コムシ目の内顎口形成様式と大きく異なる、独自のものであることが解った。すなわち、内顎口がこれらの3目で独自に獲得された可能性を示し、前年度に示した内顎類の他起源説を強く支持する結果となった。 また、組織学的観察により、カマアシムシ類は多足類に類似した腹器様構造を伴う神経形成を行うことが明らかになり、カマアシムシ目はこれまで考えられてきた以上に節足動物の高次系統を考察する上で重要な分類群である可能性が示され、六脚類の単系統性および起源の再検討の必要性が再認識された。
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Research Products
(3 results)