2008 Fiscal Year Annual Research Report
幕末百姓の養子慣行--江戸地廻り経済圏-山村における世帯と村落の再生産--
Project/Area Number |
07J01969
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸石 七生 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 百姓株 / 養子縁組 / 村落共同体 |
Research Abstract |
本研究の目的は前近代の養子縁組を家制度のみならず村落共同体の観点から分析し、その地域社会における意義と仕組みを明らかにすることである。平成20年度は(1)理論研究、(2)定量的な実証分析、(3)フィールドワーク及びインタビューという三つの分野にわたる手法を用いて前近代日本の養子縁組制度にアプローチを試みた。詳細は以下に示す。 (1)明治三年(1869)のデータを見ると、寺社を除いた上名栗村古組144世帯中53世帯の世帯主、つまり、世帯主の36パーセントが養子入り経験者である。つまり、上名栗村古組みでは養子縁組制度による頻繁な家族構成員の入れ替えが行われている。その中には家の超世代的存続への志向という論理だけでは説明できない例も存在する。そのような例の説明を可能にするのが、百姓株制度である。端的に言えば、村落共同体は百姓株の数を一定に保つための手段として養子縁組を利用しているのである。報告者は先行研究のサーベイを通じ、前近代の株制度における百姓株の特殊性と普遍性を明らかにしようと試みた。 (2)報告者は吉田あつし教授(筑波大学)との共同研究において、計量経済学的分析のための歴史的データの処理方法を研究した。その成果の一つが2009年3月の日本農業史学会での個別報告「幕末の持続的小農経営としての炭生産」である。そこでは、上名栗村古組の世帯の生業と世帯の寿命の関係を明らかにし、養子縁組が盛んに行われた社会経済的な背景について考察した。 (3)名栗村出身の加藤衛拡教授(筑波大学)から下名栗村における入会と百姓株の関係についてコメントを得た。また、飯能市の郷土資料館を訪ねて史料の現存状況についての情報収集を行った。
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Research Products
(6 results)