2008 Fiscal Year Annual Research Report
「自然的素質」としての歴史はいかにして可能か-カントの歴史・社会哲学の基礎構造
Project/Area Number |
07J01983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮村 悠介 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 倫理学 / 学 / 常識 / カント / 実践理性 |
Research Abstract |
三年度の研究期間の二年目にあたる今年度は、本研究を遂行するうえで重要なテーマとなる、カント倫理学の研究におもに取り組んだ。その研究の成果として、二本の論文を公表することができた。論文「<実践理性批判>の理念の成立--学と常識のはざまで--」は、カント倫理学の成立の過程と、その学としての性格を、学に先立ち、またカント倫理学に基盤を与える「常識」との関係から明らかにしたものである。こうした考察により、『実践理性批判』に至るカント倫理学の生成の過程に、従来とは異なる観点から、しかしカント倫理学の中心的な問題の観点から、光を当てることができたとともに、またカント倫理学の基本的な性格を、その方法論の観点から捉えかえすことができた。この研究は、西洋倫理学を代表するカント倫理学について、その発展と主張の前提とを、従来とは異なる視角から明らかにする、カント研究としての意義があるとともに、また一般に、倫理学の学としての性格を、学に先立ち学の地盤となる常識との関係から考える、ひとつの倫理学研究としての意義も有している。また論文「主題としての実践理性--「批判的解明」の倫理学」は、カント『実践理性批判』の「批判的解明」という節の読解を通じて、カント倫理学の方法論を考察し明らかにしたものである。理論哲学の方法に比べ注目されることの少なかった、カント倫理学の方法を、発展史的観点をまじえつつ明らかにするこの研究には、カント倫理学研究としての意義のほかに、行為し活動する人間知性、つまり「実践理性」を研究対象とする、倫理学一般の方法論の研究としての意義もある。
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Research Products
(3 results)