2007 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙におけるバリオン非対称性及び暗黒物質の起源に関する研究
Project/Area Number |
07J01988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 和則 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 暗黒物質 / バリオン非対称性 / 超対称性 / アクシオン / 重力波 |
Research Abstract |
宇宙における物質・反物質非対称性(バリオン非対称性)の起源として、超対称性理論において自然に実現されるアフレック・ダイン機構と呼ばれるメカニズムに注目し、研究を進めた。まず、超対称性の破れの模型の一つであるアノマリー伝達模型ではアフレック・ダイン機構は働かないと従来考えられていたが、宇宙初期における有限温度の効果を正確に取り入れればそれが可能となることを示した。 一般に超弦理論や超重力理論においてはモジュライと呼ばれる場が宇宙論的に重大な問題を及ぼすことが知られている(モジュライ問題)。アノマリー伝達模型や、ミラージュ伝達模型と呼ばれる模型においては、比較的重たいモジュライ場が予言され、モジュライの崩壊によってバリオン数が薄まってしまうことが問題視されていた。我々はこのような重たいモジュライの存在下においても、アフレック・ダイン機構によってバリオン数を作ることができることを示した。同時に、モジュライの崩壊によって非熱的に生成されたニュートラリーノがちょうどよい暗黒物質の候補となることを示した。また、その直接検出の可能性も調べた。 標準理論における強いCP問題に対する解としてPeccei-Quinn機構があり、アクシオンと呼ばれる軽い粒子の存在が予言されている。今回、我々は超対称アクシオン模型においてスアクシオンと呼ばれる新たなスカラー場が現れることに注目し、その宇宙論的影響を詳しく調べた。その結果、インフレーション後の再加熱温度に対して厳しい制限がつくことが分かった。また、ある種の模型においてはこのような制限を回避することが可能であることも示した。 宇宙の再加熱温度は素粒子論的な観点からも重要なパラメータであるが、現在のところ観測からはほとんど制限がついていない。我々は、将来の宇宙重力波干渉計、DECIGO/BBOにおけるインフレーション起源の背景重力波スペクトルの観測によって、再加熱温度をある範囲で決定可能であることを示した。
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Research Products
(13 results)