2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本ゲイコミュニティの社会学:セクシュアリティと「文化」の関係をめぐって
Project/Area Number |
07J02016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森山 至貴 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | セクシュアリティ / マイノリティ / コミュニティ / クィア理論 / 社会学 |
Research Abstract |
2008年度は、論文執筆および学会発表を中心に研究を実施した。 セクシュアリティおよび親密な関係性とコミュニティ全体の関係を問うための理論的準備として昨年度から継続して考察してきた枠組みを「<愛>の決疑論」、『ソシオロゴス』(32)、pp.198-213にまとめた。その後、研究課題により引きつけ、ゲイコミュニティを論じる際に着目すべき点について重点的に考察を深め、「人を選り好みすることとしての<愛>-その決疑論的性質を考慮した研究のために-」(日本社会学会第81回大会)の口頭発表を行った。これら一連の作業によって、本研究課題の理論的枠組みは完成したことになる。 この枠組みを用い、既存のゲイコミュニティに関する言説を整理し、分析した。これは本研究課題全体にとっての先行研究の批判的検討と位置づけられるものである。まず「ゲイコミュニティ語りの「系譜」」(第23回日本解放社会学会)と題されたの学会発表を行い、その際2008年度日本解放社会学会優秀報告賞を受賞した。この賞は当該学会でもっとも優秀な発表を行った若手研究者に授与されるものである。その後学会でのコメントなどを踏まえ考察を深め、2009年度に論文として出版される。 また本年度は、研究課題の中心的問い、「文化」とセクシュアリティの関係性に関する考察を進め、論文の形に仕上げた。ゲイカルチャーを牽引するゲイ雑誌の記事分析をもとに、「文化」とセクシュアリティの関係性が近年齟齬を来し始めていることを考察、分析し、「「懸命にゲイになるべき」か?-雑誌『Badi』にみるセクシュアリティとライフスタイルの関係性」『論叢タイア』(1)、pp.76-98の形にまとめた。この論文は、問題意識の点においても、具体的な対象にあたっての実証研究という点でも、本研究課題の核心をなすものである。 この齟齬に対しゲイ男性がどのような生存戦略をとっているかについて、インタビューをもとに論じたのが「ゲイ男性とゲイコミュニティのねじれた関係-「こっちの世界」という言葉に関するインタビューから」(第1回タイア学会)である。 一方、研究の遂行に伴い、ゲイコミュニティにおける異性愛および異性愛主義の果たす機能に着目する必要性を感じたため、昨年度より行ってきたタチ/ネコに関係する議論を、異性愛主義の果たす役割という観点から再構成し考察を深め、'Positions and Actions: Tachi/Neko System of Gay Men in Japan' Windows on Comparative Literature,(4)の形にまとめた。英語での発表としたのは、ゲイ男性の男/女役割に関する議論は欧米を中心にすでに蓄積があり、それらとの比較を容易にするという、ク なお、以上のような活動に並行して、実証的なデータを積み上げるためのインタビュー調査を継続して行った。
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Research Products
(6 results)