Research Abstract |
今年度は,H19年度に行った強震後の地盤浅部の剛性率回復過程に関する研究を取りまとめ,Bulletin of the Seismological Society of America誌に投稿し,9月に受理された.同論文は,720galの加速度を記録した地盤において,強震直後に約50%剛性率が低下し,その後1年以上かけて剛性率が回復することを示すものであり,すでに国際誌や国外の学会などで引用されている.また,同研究に関するセミナー発表のため,11月にフランスのジョセフ・フーリエ大学,12月にアメリカのコロラド鉱山大学を訪れ,濃密な意見交換を行った. 論文の投稿と並行して,本研究課題であるエンベロープ合成の研究を推し進めた.従来の前方散乱近似に基づくエンベロープ合成においては,震源の非等方幅射特性の影響を組み込むことができなかったが,研究代表者はWilliamson(1972)によるStochastic ray path methodを導入することでこの問題を解決した.非等方震源の効果を組み込むことにより,エンベロープの直達波部分では輻射特性の影響を反映してエンベロープ振幅に方位依存性が残るが,後続波部分ではその影響が小さくなること,震源距離が長く,媒質の不均質性が強いほど方位依存性が小さくなること,この傾向は高周波であるほど顕著であることなど,従来の観測で得られていたエンベロープの特徴を定性的に再現することに成功した.このエンベロープをグリーン関数として用い,移動震源の効果を組み込むことで,本研究課題の目的であった高周波強震動波形の合成が可能であると考えられる.現在,実際の観測エンベロープとの比較により地殻の不均質構造の推定を行い,本手法の適用可能性を検討中である.
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