2009 Fiscal Year Annual Research Report
不均質構造における散乱理論に基づく高周波強震動予測法の開発と適用
Project/Area Number |
07J02043
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澤崎 郁 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 前方散乱近似 / エンベロープインバージョン / 高周波エネルギー輻射過程 / 2003年十勝沖地震 / 短波長ランダム不均質媒質 |
Research Abstract |
本年度は,昨年開発した前方散乱近似に基づく理論エンベロープ合成法を実際の小地震記録のエンベロープに適用し,従来の輻射伝達理論に基づくエンベロープよりも直達S波におけるエンベロープ拡大をよく説明できることを示した.この性質を利用して,短波長側の速度揺らぎの大きさがべき乗側にしたがうフォン-カルマン型ランダム不均質媒質を仮定し,小地震のエンベロープ幅と距離減衰勾配から北海道地域(深さ60km以浅)の平均的な速度揺らぎの大きさεと短波長成分の相対的な強さを決めるパラメータκ,および内部減衰を推定した.その結果,北海道地域ではε=0.07, κ=0.9,内部減衰は2-16Hz帯域で0.8~1.1×10^<-3>と推定された.推定したパラメータのもとで合成した理論エンベロープをグリーン関数として用い,2003年十勝沖地震の2-16Hz帯域におけるエネルギー輻射過程と地盤増幅率をエンベロープインバージョンにより求めた.その結果,2-16Hz帯域のエネルギー輻射量は3.8×10^<14>(J)と推定され,破壊開始点の北西側120km以内で特に強いエネルギー輻射量が求められた.この領域は1Hz以下の長周期波形を用いて推定されたすべり量の大きい領域と一致した.また,高周波エネルギー輻射率が最大になる時刻はモーメント解放率が最大となる時刻と一致した.これらの結果から,当初の研究計画の目的の一つである「大すべり域と高周波エネルギー輻射域の相補性の有無」について,2003年十勝沖地震については空間的にも時間的にも相補的ではないことが明らかとなった.これは,直達波部分のエネルギーを精度よく推定することができる本研究の理論エンベロープを用いることによって初めて明らかとなった成果である.
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Research Products
(4 results)