2008 Fiscal Year Annual Research Report
先住民運動の政治イデオロギー:エクアドルおよびボリビアの比較研究
Project/Area Number |
07J02053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮地 隆廣 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ボリビア / エクアドル / 先住民運動 / 比較政治 / 社会運動 / 構成主義 / 規範 |
Research Abstract |
今年度の研究は、昨年度研究したボリビア先住民運動の比較対照であるエクアドル先住民運動について、その思想と行動の研究を行った。両者を比較した結果、得られた知見は次の通りである。 先住民運動の政治行動は大きく(A)デモや陳情といった要求的運動、(B)政党参加や自前政党の結成によって、選挙を通じて政治的影響力を持とうとする制度的な権力獲得運動、(C)実力による政権転覆や、既存の統治機構を否定すべく先住民本位の統治機構を作りだそうとする制度外的な権力獲得運動の3つに分かれる。このうち(B)と(C)については、ボリビアとエクアドルでは行動のタイミングに大きな差があり、その差が各国先住民運動の政治イデオロギーにおいて、その上うな行動を肯定する言説が登場するタイミングと同じであった。 各国の先住民運動の政治規範は、政府や労働運動、政党関係者といった他の政治アクターとの政治的交渉の中で形成されてきた。自己の政治行動や他者からのアクションに対する解釈・再解釈が新しいイデオロギーの形成につながり、それが実際に見られた政治行動を説明する上での必要条件となっている。先住民運動の政治行動は、先行研究において指摘されてきた諸要因(先住民の人口規模、選挙制度の変化)では説明かつかない。言い換えれば、先住民とそれ以外の政治アクターとの相互作用による規範形成が見られ、その規範が行動に決定的な影響を及ぼした。相互作用と規範形成は社会学や政治学で言う構成主義(constructivism)と発想を共にしている点、本研究は構成主義的アプローチを取っているといえ、そのアプローチが実際の先住民運動の説明に有効である可能性が見えてきた。
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