2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小俣 日登美 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キリスト教史 / 清代史 / 東西交流史 / 中国社会史 / 殉教 / 迫害 |
Research Abstract |
18世紀中葉、中国清代中期以降の社会において、カトリックキリスト教(天主教)は、西洋からもたらされた外来の新宗教として認識はされていたものの、邪教としても考えられたために、禁教そして迫害の対象となってきた。しかし実際は、清朝の禁令以降、乾隆・嘉慶帝らによる弾圧期も、一貫して西洋人宣教師は来華し、布教は続けられ、中国社会内部のカトリック信仰は連綿と近代まで維持された。この検討の為に欠かせない一次史料が、中国社会において秘密裏に布教活動を続けていた西洋人宣教師らによる報告書簡である。 今年度は、この一次史料調査をパリのマゼラン文書館及びスイスのジュネーブ大学図書館において行った。布教に関する西洋側の書簡を、中国側の漢文史料と対照して考証することにより、従来困難とされてきた"迫害者⇔被迫害者"双方の複合的な視点を研究に導入する事が可能である。このような多角的史料に立脚した天主教研究では、方法論においても深い検討が必要となる。そこで日仏会館における発表や、ベルギーにおける国際会議発表・ワークショップへの参加を通じ、国外の関連分野の研究者とも議論を行い、学際的視点を研究に積極にとりいれようとした。また、研究の成果を、中国社会文化学会・史学会といった、国内の主な中国史に関する学会において発表した。それぞれ、中国史料・西洋史料の双方に基づき、前者は中国社会に受容された天主教のイメージを、後者は清朝が行なった迫害の実態を報告したものである。このように、計画書で示した以上の発表の成果を収める事ができた。 こうした複眼的な清代の天主教像を明らかにすることで、清代から近代に至るまでに形成された、中国社会における宗教観・"邪教"観・西洋観を明らかにする事ができる。またこの研究課題の性格上、中国史のみならず、キリスト教史、宗教史に関わる研究者とも、学際的・国際的な交流が可能となり、中国史学の新しい方向性をさぐるものである。
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Research Products
(6 results)