2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J02085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 裕一 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マルチフェロイクス / マグネトキャパシタンス効果 / スピン軌道相互作用 / 量子常誘電性 |
Research Abstract |
今年度は、磁気光学素子などにも応用されているイットリウム鉄ガーネット(YIG)において新たに量子常誘電性と強磁性の相関現象を発見した。YIGは磁気秩序温度が560Kであり、室温において自発磁化を有するフェリ磁性体である。本研究では磁場により誘電率が変化する現象(マグネトキャパシタンス効果)を測定し、温度が10Kで測定周波数が10Hzという条件の下、0.3T程度の磁場により13%を超える巨大な効果が発現することを発見した。またYIGのマグネトキャパシタンス効果は測定周波数に大きく依存する特徴を持っていることを発見した。これは誘電緩和の存在を示唆しており、マグネトキャパシタンス効果の起源を明らかにするために誘電緩和とその外部磁場応答を測定した。YIGの誘電緩和は最低温度でも凍結することなく発現しており、最低温度では緩和時間が温度に依存しない振舞いを示した。このことは誘電緩和の起源となる双極子モーメントが量子トンネリングによって緩和することを示している。誘電率の温度変化はSrTiO3などで観測されるような量子常誘電性を示し、その振る舞いが磁揚によって変化することを明らかにした。このような振舞いを理解するために横磁場イジングモデルを用いて解析を行った結果、双極子に作用する有効電場が外磁場の方向に強く依存していることがわかった。我々はこれらの現象を理解するために、酸素欠損などが誘起する過剰電子が鉄イオン間を量子トンネルすることにより誘電緩和が発現しているとするモデルを考えた。その場合、鉄イオンのエネルギー準位はスピン-軌道相互作用により変化を受け、外部磁揚の方向に強く依存する。つまり、電子が量子トンネルしている鉄イオン間には、スピン軌道相互作用によりエネルギー差が発現することになる。このエネルギー差が量子トンネルにおける有効電場に対応していると考えると実験結果が説明できことを明らかにした。
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[Presentation] (Gd, Tb)MnO3の強誘電相における磁気構造2008
Author(s)
山崎裕一, 佐賀山基, 有馬孝尚, 野田幸男, 阿部伸行, 佐々井健蔵, 松浦直人, 廣田和馬, 奥山大輔, 十倉好紀
Organizer
特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」第2回トピカルミーティング「フラストレーションとマルチフェロイクス」
Place of Presentation
京都大学宇治キャンパス
Year and Date
2008-06-06