2007 Fiscal Year Annual Research Report
次世代赤外線高分散分光器による高赤方偏移における銀河間物質の進化の研究
Project/Area Number |
07J02185
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 荘平 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 化学進化 / 赤外線 / 高分散分光 |
Research Abstract |
宇宙論的な距離に存在するクェーサーを背景光として、そのスペクトルに現れる銀河間空間の水素や金属の吸収線を用いて宇宙論的なスケールで銀河間物質の金属量、化学組成の進化の研究が可能である。高赤方偏移(z>3)での化学進化を解明するには、観測系で赤外線の波長域に赤方偏移した吸収線の観測が必要である。そのため、既存の装置による観測的な研究と、さらに化学進化を解明する上で重要な、極めて弱い吸収線を観測するための高感度な赤外高分散分光器「WINERED」の開発的研究すすめている。すばる望遠鏡の近赤外撮像分光器(IRCS)を用いて高赤方偏移クエーサー「APM08279+5255」の赤外線高分散分光観測を行った。その結果z=3.5023の明確なMgII吸収線と、微弱なFeII吸収線を検出した。さらに可視光高分散分光で検出されている中性水素や他の金属吸収線と合わせて、光電離モデルを用いて、金属量、化学組成を導出した。これらは宇宙論的な化学進化の重要な指標となるMg/Fe等の組成比の高赤方偏移での初めての結果である。 従来の赤外線高分散分光器では分解能が足りなく(R=10,000)、弱い吸収線を十分に検出することは難しい。そのため特殊な光学素子(イマージョングレーティング)を用いて高分解能(R=70,000)を達成でき、かつ高感度な観測が可能な赤外線分光器「WINERED」の開発をすすめている。赤外線検出器の読み出しシステム「UTIRAC」の開発を進め、高感度な観測を行うために必要な低いノイズでの読み出しが可能となった。さらにWINERED全体の光学素子を組み上げ、赤外線検出器「VTRGO」の電子回路の実験用であるマルチプレクサの駆動させて、スペクトルの取得に成功し、完成の目処を立てた。
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Research Products
(2 results)