Research Abstract |
本研究では,データの利用性を向上させることを目的として,アドホックネットワークにおける消費電力を考慮した複製管理に関する研究を推進した. まず,データの利用性の向上と移動体間の消費電力の均一化を目的として,移動体が,他の移動体からアクセスされる回数を均一化しつつ,自身や周囲の移動体が頻繁にアクセスするデータの複製を優先的に配置する複製配置方式を提案した.また,電力を使い果たす移動体の発生を抑制するため,データ転送に用いる経路を経路長および経路上の移動体の電力残量に応じて選択するデータアクセス方式を提案した.さらに,これらの方法を併用したシミュレーション実験による性能評価を行い,移動体間の消費電力をさらに均一化することを確認した. 次に,ユニキャストを用いたデータ転送では,頻繁にアクセスされるデータがネットワーク上を何度も転送され,移動体の消費電力が大きくなるため,マルチキャストを用いたデータ転送方式を提案した.提案方式では,移動体からのデータ要求にデータの取得時間のデッドラインが設定されている環境を想定し,移動体は,データ要求した移動体がデッドラインの時間内にデータを取得できるよう,データ転送を開始する時刻を決定する.また,同じデータを要求している複数の移動体でデータ転送木を作成し,これらの移動体にデータをまとめて転送する.これにより,データ転送によるトラヒックを削減し,データの利用性を損なわずに移動体の生存時間を長くする.今後は,データ転送方式の性能をシミュレーション実験によって評価し,その有効性を検証する.また,データアクセスや複製配置との併用による提案方式の拡張について検討を行う.例えば,移動体が,取得したデータの複製を作成し,他の移動体から要求されたデータを転送することで,転送に要する時間やトラヒックを削減できるものと考えられる.
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