2009 Fiscal Year Annual Research Report
ハーフメタル系エピタキシャル強磁性トンネル接合の製作とスピン輸送特性の研究
Project/Area Number |
07J02234
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石川 貴之 Hokkaido University, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強磁性トンネル接合 / ハーフメタル強磁性体 / ホイスラー合金 / エピタキシャルトンネル接合 / スピントロニクス / 不揮発性磁気メモリ |
Research Abstract |
本研究は、潜在的に大きなスピン偏極率を有するハーフメタル系ホイスラー合金Co_2MnSi(CMS)薄膜を用いた、高品質エピタキシャル強磁性トンネル接合(MTJ)の製作技術を確立し、その優れたスピン依存輸送特性を実証することを目的としている。前年度までに、CMSを強磁性電極、MgOをトンネル障壁層として用いた、CMS/MgO/CMSエピタキシャルMTJ(CMS-MTJ)を製作し、室温で180%、低温4.2Kで700%程度の良好なトンネル磁気抵抗(TMR)比を実証すると共に、スピン依存コンダクタンス特性の解析から、MgOとの界面領域におけるCMS電極の界面電子状態の存在を示唆する結果を既に得ている。当該年度は、CMS薄膜の組成に着目し、電極の薄膜組成がCMS-MTJのTMR特性に及ぼす影響を明らかにすることを主目的として、研究を実施した。その結果、TMR特性がCMS薄膜のMn組成に強く依存することを実験的に見出し、特に、Mnの組成が過剰なCMS薄膜を用いることで、化学量論的組成のCMSを電極としたMTJよりも、さらに高い.TMR比が得られることを明らかにした。これは、CMSのハーフメタル性を劣化させることが理論的に指摘されているCoアンチサイト欠陥が、Mn組成の過剰なCMS薄膜を用いることにより、抑制されるためと解釈できる。このように、CMS薄膜の組成の適切な制御により、構造欠陥を制御することが可能であり、結果として、ハーフメタル性を改善可能であることを明らかにした。本研究で得られたこの成果は、CMSのみならず、ハーフメタル強磁性体全般に共通する重要な知見であると位置づけられ、今後の研究発展を促すものであると考えられる。
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Research Products
(17 results)