2009 Fiscal Year Annual Research Report
先端医療技術の時代における人間の条件:身体=機械の異種混交性に関する人類学的研究
Project/Area Number |
07J02262
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 Osaka University, コミュニケーションデザイン・センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 臓器移植 / 医療人類学 / 身体 / 科学技術と社会 / 経済化 / 贈与 |
Research Abstract |
平成21年度は、本研究の最終年度である。前半期は、昨年度から引き続きフランス社会科学高等研究院において在外研究に従事し、フランス語圏における医療の人文学的研究の動向を詳細に検討することができた。10月に帰国し、後半期は成果報告として各種研究会での発表、論文の執筆を行った。 主たる問題関心として、臓器移植医療において死の問題と経済的統治の問題が結びついていることをとりあげた。人間の生命の管理が、同時に死の管理として現象し、経済的なシステムの中で作動しはじめていることを「バイオエコノミー」という新たな経済領域の問題として提示した(印刷中)。人間を直接的な対象(資源)とするこの経済実践を主題化することは、特別研究員として行ってきた研究課題「先端医療技術の時代における人間の条件」に一定の展望を示すものである。先端医療技術と社会との関わりをとらえる上で、これまで論じられてこなかった新たな問題系(バイオエコノミー)が成立しつつあることを示したことは、本研究の成果といえる。またそのさいに、新たな経済的統治の問題を、ミシェル・フーコーの生政治学の現代的とらえなおしと位置づけることで、今後の研究の方向性を定めることができた。 医療技術の問題を、ただ医療実践の問題としてのみ論じるのではなく、人類学的な研究課題として引き受けながら、より広く社会的・経済的・文化的問題として新たに研究を進める必要があることを明確に打ち出せたことは、本年度の研究の大きな収穫であり、今後の研究の重要な出発点となる。
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Research Products
(4 results)