2007 Fiscal Year Annual Research Report
先端医療技術の時代における人間の条件:身体=機機の異種混交性に関する人類学的研究
Project/Area Number |
07J02262
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 Osaka University, コミュニケーションデザイン・センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 臓器移植 / 脳死 / テクノロジー / 贈与論 / 経済化 / 身体 |
Research Abstract |
おもに近年の科学論(サイエンス・スタディーズ)の成果を踏まえて、技術と人間の異種混交的なあり方や、肉体の所有概念の変容を明らかにすることを目的とした研究を行った。理論的な課題として、社会的統治技術について論じるミッシェル・フーコーの議論を、より民族誌的な研究に引き寄せて展開するために必要となる諸概念の検討をおこなった。重要な成果として、dispositifsやaccountabilityといった概念の応用可能性についていくつかの事例に当てはめて検討したことによって、人とモノの集合的な実践のプロセスを明らかにするための研究の端緒を得ることができた。これらは、次年度以降の研究にとっても有益である。 調査の面では、7月にワシントンD.C.で開かれた全米のドナー家族記念祭で参与観察にもとづく調査を行い、日本ではほとんどなされていないドナー家族のケアの実態について理解する上で、今後必要になるデータを収集した。全米ドナー家族記念祭にはいまだに日本の研究者が訪れたことがなく、その機会も限られているため、その意味でも貴重なデータ収集の機会となった。国内の調査に関しては、これまでに引き続き新潟や東京を中心に行った。 研究の成果は、6月の文化人類学会、12月には文化人類学会の関連シンポジウムにおいて発表し、人体の経済が拡大することにともなって、さまざまな概念的混乱が生じていることを論じた。そして、移植医療にとどまらず、近年の遺伝子治療やES細胞研究において共通して登場する贈与の概念を新たな歴史的文脈においてとらえなおす必要があることを指適した。人体経済における贈与論の系譜学、そして商品概念の歴史性、さらには臓器の取り扱いにともなう普遍経済の構想を打ち立てることが、今後の研究にとって重要な論点となる。
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Research Products
(3 results)